労基法改正!有給休暇の取得の義務化について弁護士が解説

Q.

法改正により、有給休暇の取得が義務付けられるようになると聞きました。具体的にどのようになるのか、教えてください。

 

A.

2018年7月6日、有給休暇が確実に取得されるように、会社に義務を課すべく、法改正がなされました。

改正法の施行日は、2019年4月1日と間近に迫っています。以下で、この点について解説します。

 

現行の有給休暇概要のおさらい

会社は、6ヶ月以上継続勤務して、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、年次有給休暇を与えなければなりません(労働基準法39条)。

年次有給休暇の付与日数は、勤続年数に応じて加算されます。

勤続年数 0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

 

年次有給休暇を取得するには、労働者から、会社に対して、時季指定をする(例:「●月●日に休みます」)必要があります。

※例外として、労使協定により、年次有給休暇の時季を決めることも可能です(これを「計画的付与」といいます)。

 

具体的には、以下の流れとなります。

①労働者から、会社に対し、年次有給休暇の時季を指定する(例:「●月●日に休みます」)

 

しかし、労働者からは、年次有給休暇の取得を申し出づらく、年次有給休暇の取得が進まないという現状がありました。

 

法改正(一定日数の年次有給休暇の確実な取得)

そこで、2018年7月6日、一定日数の年次有給休暇の確実な取得について、法改正がなされました。

 

この法改正により、会社には、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者について、会社から、年5日分について、毎年、時季を指定して与えなければいけないという義務が課されることになりました。

 

具体的には、以下の流れとなります。

①会社から、労働者に対し、年次有給休暇を取りたい時季について、希望を聴取する。

②希望を踏まえ、会社から、時季の指定をする(例:「●月●日に休んでください」)

 

ただし、労働者が自ら年5日以上の年次有給休暇を取得した場合や、年5日以上の年休の計画的付与を行っている場合には、会社は時季指定をする義務から解放されます。

 

したがって、会社としては、まずは労働者に自ら年次有給休暇を取得するよう働きかける必要があります。それでも年5日分の有給が消化されない場合には、会社から有給の時季を指定しなければならないということになります。

 

厚生労働省の調査によると、初めて勤務した会社を辞めた理由のトップは「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」です(厚生労働省「平成25年若年者雇用実態調査」)。

求人状況が厳しくなりつつある昨今において、有給取得の状況は求人の重要なファクターとなります。

この度の法改正を機に、年次有給休暇の取得について、見直してみてはいかがでしょうか。

 

著者:センチュリー法律事務所 小澤亜季子(東京弁護士会所属)

依頼者の皆様の不安を少しでも取り除けるように、お気持ちに寄り添い傾聴すること、なるべく早く具体的な解決策を提案すること、そのための費用がいくらかかるのかを明確にすることを心がけております。

プロフィール:http://century-law.com/lawyers/akiko_ozawa

 

小澤 亜季子 おざわあきこ

センチュリー法律事務所

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