【意外と知らない!】株式譲渡に必要な手続【事業承継】

Q.

私は会社の経営者です。毎年、後継者に株式を贈与しておりますが、特に書面を交わすことはしておりません。そうしたところ、当社の役員より「株式譲渡の手続きを踏まえていないのではないか」と言われました。どういうことでしょうか?

 

A.

非上場会社で事業承継を行う際には、先代経営者から後継者に対して、先代経営者の存命中に、自社の株式を譲渡することが多いです。特に、会社の顧問税理士の指導により、相続税・贈与税対策のため、先代経営者から後継者に対し、毎年少しずつ株式を生前贈与していくという手法は、実務で多くみられるところです。

この株式譲渡が有償(売買)であれ無償(贈与)であれ、株式譲渡には会社法の規制が及びます。主に、以下の内容の手続きが必要となりますが、これらの手続きを踏まえていないケースが多くみられますので、この機会に一度、自社の株式譲渡において取られている手続きを確認してみてはいかがでしょうか。

 

1.株式譲渡契約の締結

後日の紛争(言った・言わないの争い)を予防するためにも、株式譲渡契約書を作成した上で、株式譲渡契約を締結しておくことが望ましいです。

 

2.株主名簿の名義書換

次の法定の事項(会社法121条)を記載・記録した株主名簿を整備して、名義書換を確実に行う必要があります。

(1) 株主の氏名・名称+住所

(2) 株主の保有株式数(種類株式発行会社では、株式の種類・種類ごとの数)

(3) 株主の株式取得日

(4) 株券発行会社では、株券が発行されている株式の株券番号

 

3.譲渡承認決議(いわゆる非公開会社の場合)

譲渡による株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めがない株式会社は「公開会社」(会社法2条5号)です。これに対し、株式譲渡について株式会社の承認を必要とする旨の定款の定めがある株式会社が、いわゆる非公開会社です。そして、非公開会社において、株式譲渡に株式会社の承認を要するものと定款で定められている株式を、「譲渡制限株式」(会社法2条17号)といいます。

譲渡制限株式の譲渡の際には、株式会社の譲渡承認決議を行う必要があります。原則として、取締役会設置会社では取締役会決議、取締役会非設置会社では株主総会決議が、「株式会社の承認」(会社法139条1項)として必要です。

 

4.株券の交付(株券発行会社の場合)

株券発行会社の場合には、原則として、株式譲渡は、株券を交付しなければ、その効力を生じない(会社法128条1項本文)とされており、いざ株式譲渡を行う段階になってはじめて、株券の所在が問題となるようなケースもあります。何か特別な事情がない限り、あえて株券発行会社のままにしておくメリットはあまり見当たらないように思われますので、時間的な余裕がある場合には、株券不発行会社に移行する定款変更(会社法218条)を行っておくことが望ましいです。

現行の会社法(2006年5月1日施行)では、株式会社は原則として株券不発行会社です(会社法214条)が、会社法施行前の旧商法の頃に設立された株式会社は、株券発行会社のままとなっていることがありますので、定款や法人登記の内容を改めて確認しておく必要があります。

 

著者:センチュリー法律事務所 皿谷将 弁護士(東京弁護士会所属)

事業承継を中心に、主に中小企業法務に携わる。父の開業した税理士事務所を承継し、自身も事業承継の当事者であることから、特に事業承継においては当事者目線を大事にしている。依頼者の話をよく聞き、依頼者と継続的な信頼関係を築くことを心掛けている。

プロフィール:http://century-law.com/lawyers/sho_saraya

 

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