先日ある掲示板に、男性会社員と思われる人物から以下のような書き込みがあり、激しい議論が繰り広げられました。
「職場の服装について、男性はスーツ着用が義務付けられているのに、女性はカジュアルな服装をしている。これはいかがなものか」
投稿者はこの件について、「性別によって服装規定に違いが出るのはおかしい」「カジュアルな服装の社員がいると顧客からの信頼を得られない」などと持論を展開しました。
反応は真っ二つ
カジュアルな服装が信頼の低下につながるという意見については、反対意見が多数を占めました。一方で、男女の服装規定の違いについては賛否両論でした。
掲示板のレスでは「同意する!」「自分もそう思っていた!」という声と「小さなことで目くじら立てすぎ!」「個性の1つだ!」など、意見が真っ二つに分かれているようです。
男女同権とするなら、投稿者の主張するように、男性にもオフィスカジュアルを認めるか、女性にスーツ着用を義務付けなくてはならないようにも思えるのですが…。
仮に投稿者が「男性と女性で服装の規定が違う」ことに不当性を訴えた場合、認められるのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士に見解を伺いました。
男女で服装規定に違いがあるのは法律違反?
冨本弁護士:「結論としては、法律に違反しないのではと考えます。男女差別を禁止・規制する基本的な法律は男女雇用機会均等法ですが、これは雇用の分野における男女の均等な機会や待遇の確保を図るための法律です。
男女の均等な待遇の確保という考え方からすれば、服装に関するルールは待遇と考えられなくもありませんので、男女の差別は望ましくありません。
しかし、現行法で禁止されている差別は、以下に関するものにとどまります。
- 労働者の募集及び採用
- 労働者の配置
- 昇進
- 降格及び教育訓練
- 住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置
- 労働者の職種及び雇用形態の変更
- 退職の勧奨
- 定年及び解雇並びに労働契約の更新
したがって、男女の服装規定の違いに関しては、法律に違反しないと考えられます。
男女の服装規定の違いは、世間の考え方を取り入れて異なる扱いをしているだけともいえるでしょう。現に”男性社員はスーツ、女性社員は私服OK”という風潮があり、男性社員にスーツ着用が求められるビジネスシーンも実際あるわけですので、やむを得ないものと考えられます。
また、女性社員が私服可である理由についても、世の中のビジネスシーンで女性の私服が許容されているからであり、だらしない恰好まで認めるものではないと思われます」
まとめ
男女で服装の規定が違うことに違和感を覚える方もいると思いますが、不合理な差別とはいえず、違法性は認められないとのことです。
「女子だけオフィスカジュアルなんてずるい!」という気持ちもわからなくはないのですが、現状は「服装の違い」を受け入れるしかないようですね。
*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)