増加傾向にある弁護士の犯罪 世間の目が厳しくなるなかでどうあるべきなのか?

昨今、弁護士による犯罪が多発しています。記憶に新しいところでは、札幌市内のタクシーに乗っていた30代の弁護士が運転手に怒り、何度もイスを蹴るなどして暴れた事件があります。

また、クライアントから預かった依頼金を着服し、飲食代や趣味へと流用した事件も発生。いずれもありえない出来事で、信頼を失うことになりました。

このような状況のなか、弁護士は今後どうあるべきなのでしょうか?ともえ法律事務所の寺林智栄弁護士にお聞きしました。

■弁護士はどうあるべきか?

寺林弁護士:「一昔前までは、弁護士は、「違法な行為」とは縁のない存在であったと、一般の人からは思われていたかもしれません。しかし、昨今、弁護士が犯罪やその他法的な問題を起こすケースが報道されるようになってきました。

例えば、依頼者から預かっている金銭を多額に横領したというケース。

第三者に対して暴行をふるったというケース。

盗撮をしたり、児童買春をしたりしたというケース。

種々様々なものがあります。

以上のようなケースは、単に、弁護士の数が増えて、種々様々な人が弁護士という資格を得るようになったからという単純な理由で生じているものではないと、個人的には考えています。

ただ、従前の弁護士業界に比べて競争が激化していることは、大きな要因ではないかと思います。例えば、横領のケースでは、事務所の経営難が1つの理由になっているものと思われます。 第三者に対する暴行や、盗撮、児童買春などは、ストレスが最も大きな理由でしょう」

 

■弁護士も悩みを抱えることがある

寺林弁護士:「事務所の収益を上げるためには、不本意な事件を受任しなければならないこともありますし、これまでであればだれも受けなかったであろう事件を受けて依頼者や相手方にひどく翻弄されることも少なくありません。 そういう事件が多くなってくると、どうしても気持ちのやり場がなくなってきたりするものです。

同業者の友人は、友人であるとともに、収益という点ではライバル関係に立つものですから、相談したり愚痴をこぼしたりするにも限界があります。

そうやって、悩みを抱え込んだ結果、暴行や盗撮、児童買春などに走る結果になった人も少なくないのではないかと思います。このような厳しい業界の中で、弁護士はどうあるべきかを考えるのは、非常に難しいことです」

 

■地道な努力をするしかない

寺林弁護士:「ひとりひとりができることは、非常に地味で地道な努力しかないでしょう。まずは、一件でも多くの事件を受任できるよう常にアンテナを張り巡らせておくこと、次の紹介につながるように1つ1つの事件を丁寧にこなすこと、これが基本になると思います。

また、業界全体としては、弁護士が参入できる領域を拡大していくことが必要ではないかと思います。最近では、高齢化社会に伴い、後見や信託、福祉の分野に弁護士が参入できうる領域を拡大してきましたが、それだけでは頭打ちになってしまうことでしょう。

弁護士の不祥事を減らしていくためにも、業界全体として「稼げる領域」というものを開拓していくことが、必要なのではないかと考えています」

弁護士といえども人間。「儲からない」「仕事がうまくいかない」などの壁に当たれば、心のバランスを崩してしまい、場合によって犯罪者となってしまうようです。

競争が激しくなったといわれる業界ですが、弁護士を必要としている人が減っているわけではありません。弁護士の力を借りたい人と、仕事が欲しい人。その両者が迅速かつ適正にマッチングするようなシステムが求められているのかもしれません。

 

*取材協力弁護士:寺林智栄(ともえ法律事務所。離婚・男女トラブル、労働トラブル、交通事故、借金問題、遺産相続、詐欺被害、消費者被害、刑事事件などを扱う)

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)

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