5月、福井県あわら市の前市長が、公務中既婚女性を市長室に呼び出し、体を触る、抱きつく、キスをするなどしていたとして、強制わいせつ容疑で書類送検されました。
市長は「合意のもとだった」などと話していますが、「そもそも市長室でこのような行為に及ぶことがありえない」と批判の声が噴出しています。
■女性も恐喝未遂で書類送検
今回の事件では被害女性が夫と共同で市長に対し示談金として5,000万円を要求したことが発覚。なんとこちらについても、恐喝未遂容疑で書類送検されることになりました。
市長という立場で公務中に女性といかがわしい行為をすることは言語道断ですが、女性の行動も疑問符がつくもので、「ハニートラップ」説も浮上しているようです。
現在のところ最初から金銭目当てだったのかどうかはわかっていませんが、仮に強制的にわいせつを受けたのなら、示談金を要求されても致し方ないようにも思えます。
なぜこの行為が恐喝未遂となったのか。笠原総合法律事務所の生田康介弁護士に見解を伺いました。
■権利の範囲を超えると違法となる
生田弁護士:「暴行やセクハラなどの不法行為の被害者が、加害者に対し損害賠償を請求するのは当然の権利です。お金を貸した人が借りた相手に対しその返済を求めるのも同様です。
しかし、権利を行使するために何をしてもよいというわけではありません。あくまでその権利の範囲内で、かつ社会通念上許容される範囲内で権利行使すべきであり、これを超えると権利行使自体が違法となります。
刑法上の恐喝罪に問われたケースもあります。たとえば、本来請求できる額よりも過大な額を請求したり、相手が身の危険を感じるほどの脅迫を行った場合などがこれにあたります」
■過大な示談金が背景か
生田弁護士:「あわら市前市長の件は、具体的内容は明らかではないですが、被害女性の側も捜査の対象となったということは、過大な示談金を要求したり、脅迫的な請求をしたという事情が背景にあるものと思われます。
このように、権利行使が行きすぎると、民事上、刑事上の責任を問われることがあるので、トラブルになる前に弁護士に相談し、請求の方法や態様を確認しておくことをおすすめします。」
不法行為を受けた被害者が損害賠償を請求することは当然の権利ですが、あくまでも「社会通念の範囲内」が前提となります。
政治家などパワーを持っている人間の場合、それを超えたと主張し、問題をうやむやにしようと企むケースも考えられます。弁護士はそのようなとき、被害者を守ってくれますので、積極的に相談することをおすすめします。
*取材協力弁護士:生田康介(笠原総合法律事務所)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)
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