日大アメフト部員による悪質タックル…スポーツの試合で故意に相手を怪我させた場合不法行為になる?

世間を巻き込んだ大騒動へと発展した日本大学アメリカンフットボール部選手による悪質タックル問題。タックルはもちろんですが、背景にあるとされる内田正人前監督・井上奨コーチの圧迫的な指導が問題になっています。

スポーツの世界で、今回のように相手を故意に怪我させるようなプレーを行うことはめったにありません。しかし、「故意に」怪我をさせようとするプレーヤーや、それを指示する指導者が絶対にいないとも言い切れません。

仮に「故意に怪我」をさせた場合、被害を受けた側は損害賠償などを請求することはできるのでしょうか?笠原総合法律事務所の生田康介弁護士に見解を伺いました。

 

■スポーツの試合で故意に相手を怪我させたら…?

生田弁護士:「故意に他人に暴行したり、怪我を負わせたりすると刑法上の暴行罪、傷害罪に問われ、民法上は不法行為に基づく損害賠償責任が生じます。しかし、スポーツの最中に相手に暴行したり怪我を負わせたりしても、原則として刑事上、民事上の責任を問われることはありません。

スポーツは身体や用具の接触を伴う以上、常に怪我などを負う危険性があり、それを最小限なものとするために厳格なルールが決まっています。したがって、ルールの範囲内での行為については、正当な行為として違法ではないと解されています。

逆に、ルールの範囲外の反則行為で相手を怪我させた場合は、正当行為とは認められず、刑事上、民事上の責任が生ずる可能性があります。もっとも、故意に反則を犯したのか、勢い余って反則になってしまったのかの線引きは難しく、裁判上責任ありと判断されたケースはさほど多くはありません。あくまで、個々のスポーツの特性や事故が起こった際の具体的状況を全体的に考慮して、違法か否かの判断がなされるものと考えられます」

 

■日大アメフト部員の悪質タックルは不法行為になる?

次に今回の日本大学アメリカンフットボール部員による悪質タックルについて、不法行為になりうるのかなど、見解を伺いました。

生田弁護士:「今回の悪質タックルケースは、プレーが終了してから4~5秒後にタックルに行っており、故意に反則を犯したことが明白であること、タックル自体が重大な怪我につながる可能性のある行為であることからすると、刑事上、民事上の責任を追及される可能性はあると考えられます。もちろん、それを監督やコーチが指示したのであれば、共同で責任を問われることになります。

この先は私見になりますが、私は高校、大学とラグビーをしており、試合において、「あいつを潰せ」、「殺す気でタックルしろ」と声を掛けることは珍しいことではありませんでした。

だからといって、反則をしてまで相手を傷つけるような人は誰もいません。そんなことをしたら自分自身が非難されるし、タックルという行為が危険な行為であるということがよく分かっているからです。本件の本質は、選手があそこまでの行為に及ぶことを決断するほどの根強い心理的圧迫が、監督やコーチから日常的になされていたのではないかという点にあるのだと思います。」

アメリカンフットボールやラグビーといったコンタクトスポーツであっても、「明らかにルールを逸脱している」と判断される行為によって相手を怪我させた場合は、刑事・民事で責任を問われる可能性があるということを指導者・選手とも、認識しておく必要があるのではないでしょうか。

*取材協力弁護士:生田康介(笠原総合法律事務所)

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)

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生田 康介 弁護士

笠原総合法律事務所

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