新型痴漢『触らない痴漢』法律で罰することはできる?

「触らない痴漢」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 匂いを嗅ぐ、バッグや物を体に押し当てる、盗撮する、いやらしい発言をするなど、直接の接触行為ではない性的なコンタクトがこう呼ばれ、最近テレビや週刊誌で報じられたことで話題となっています。

この触らない痴漢、法的にはどのように取り締まられるのでしょう? 銀座さいとう法律事務所齋藤健博弁護士に伺いました。

 

触らなくても法律に触れる可能性あり

法律では、具体的に何をすれば痴漢、といったことは明記されていません。現在、服の上から触るような痴漢行為は強制わいせつ罪までは問えず、各自治体の定める迷惑防止条例が適用されています。

つまり、いわゆる触らない痴漢も強制わいせつ罪には問えません。では、迷惑防止条例は適用できるでしょうか?

 

齋藤弁護士「可能性としてはあるでしょう。たとえば東京都迷惑防止条例5条1項の各号を見てみましょう。

 

(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)

第五条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。

一 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。

二 公衆便所、公衆浴場、公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる場所又は公共の場所若しくは公共の乗物において、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。

三 前二号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。

 

以上のように東京都の迷惑防止条例では、身体に触れること、盗撮、卑猥な言動が禁じられています。触らない痴漢の『匂いを嗅ぐ』行為を直接禁じてはいませんが、『いやらしい発言をする』ことは卑猥な言動として問題が生じるでしょう。」

 

訴える場合はどうすればいい?

触らない痴漢は、触っていないだけに普通の痴漢のように繊維や体液などの証拠はありません。もし被害を訴えたい場合はどのようにすればよいでしょうか?

 

齋藤弁護士「ただちに被害届を出す。そのために、駅員などに救助を求め、相手方の身分証明書などの個人情報を取得することに努めましょう。そうでないと、請求できるものが事実上困難に至ったり、最悪泣き寝入りの可能性もあるでしょう。」

物的な証拠が残りにくいため、その時の状況などについての周囲の証言が重要となります。

 

もしも濡れ衣を着せられたら

「触らない痴漢だ!」と濡れ衣を着せられた場合の対処法を教えてください。

 

齋藤弁護士「濡れ衣であれば、その旨を明確に否認すべきでしょう。たとえば『やったかもしれない』など認めるような供述調書が取られてしまうと、これは有力な証拠のひとつになってしまいます。

このような証拠一つ一つから外堀を固められてしまうと、否認をしていくのは困難になってしまいます。本当にしていないなら、家に帰りたいから認めてしまおうとか、そんな思考には至るべきではありません。」

 

触る痴漢(?)であっても触らない痴漢であっても、やっていないなら対処は同じ。否認し続けることです。逃走することは逆に疑惑を深め、裁判になった際にマイナス材料になることも。やっていなくても、弁護士などの助けを得ながら冷静に無実を証明しましょう。

 

*取材協力弁護士: 銀座さいとう法律事務所 齋藤健博弁護士(弁護士登録以降、某大手弁護士検索サイトで1位を獲得。LINEでも連絡がとれる、超迅速弁護士としてさまざまな相談に対応。特に離婚・男女問題には解決に定評。今日も多くの依頼者の相談に多く乗っている。弁護士業務とは別の顔として、慶應義塾大学において助教も勤める。)

*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)

*画像はイメージです

齋藤健博 さいとうたけひろ

銀座さいとう法律事務所

東京都 中央区銀座2-4-1 銀楽ビルディング503E

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