不倫の慰謝料、途中までは払ったけど……減額できないか?

配偶者が不貞行為をはたらいた場合、配偶者本人やその相手に慰謝料を請求できることは一般的に知られていると思います。専門的には、他方配偶者に対する貞操権侵害の問題です。

当人同士の話し合いで金額や支払い方法が決まることもあれば、裁判の場に持ち込まれ判決が下されることもあるでしょう。弁護士同士の交渉に持ち込まれる局面も少なくありません。

この慰謝料、まとまった預貯金がなく一度に支払えない場合などは、請求者が認めれば分割払いも可能です。しかし、それが途中で払えなくなってしまったら……? 銀座さいとう法律事務所齋藤健博弁護士にお聞きしました。

一度出た判決を覆すことはほぼできない

数年前、既婚者と不倫し、その妻から慰謝料を請求され裁判になり、200万円支払うことになった。分割で支払っていたが、病気を患ってしまった。転職を余儀なくされ収入が減り生活が困窮し始めたので、慰謝料を減額してほしい。こんなケースの場合、慰謝料の減額は可能でしょうか?

齋藤弁護士「実は、これは確定判決には、既判力というものが生じてしまっているので、覆すのはとても難しい。もちろん、民法上事情変更の原則なる概念は承認されているのですが、これが再度の裁判などの手続きで認容されることはよほどでないとありません。」

既判力とは、裁判所が確定した判決が有する効力のことです。一度決まってしまったら新たにどんな情報があったとしても、当事者も裁判所もそれを覆す主張はできない、というものです。

どうしても払えなくなったとしても減額は困難

既判力があるから難しいとは言っても、決められた額の分割払いを続けることが現実的に不可能になることもあります。その場合はどのように交渉すればよいでしょうか?

齋藤弁護士「減額交渉などは、一応はありえるでしょう。ただし、一度既判力が生じている判決ではありますから、交渉はきわめて困難と言わざるをえません。このケースにおいて一点可能性があるとすれば、現在、分割払い期間中ですから、これを一括払いに切り替える、その代わり減額してほしい、という交渉がありえるかもしれません。ただし、これはある意味でダメもとの議論ですね。」

やはり裁判所の判決にはそれだけの重みがあるということですね。一方の事情によって一度決まった裁判の効力が変動することがあっては、法律的には安定しないからです。

慰謝料支払いをバックレたら?

どうしても払えなくなり、支払い途中で転居したり連絡先を変えたりするなどして逃げたらどうなりますか? 追ってきたり、追徴金のようなものを請求される可能性はありますか?

齋藤弁護士「逃げたら、差し押さえのリスクを負います。判決は債務名義といって、差し押さえが可能になります。たとえば、持ち家、自動車、預金口座、給料債権など、これら生活必需品が差し押さえられてしまい、有形無形の不利益が生じてしまうでしょう。」

どんな事情があっても、やはり裁判の判決というのは動かしがく、逃れることはできないものなのです。

「そのためにも、自分に不利な判決が出る前にしっかり裁判で争っておくことが重要だと思います。このケースでは200万円の慰謝料とありますが、夫婦が離婚していない状態であれば200万円の判決が認容されることははっきりいってまれです。もっと争う余地はあったのではないでしょうか。」

裁判の判決は変更したり覆すことがたいへん難しく、重みのあるものです。裁判に挑む際も、やむをえず減額交渉をする場合も、不利益を最小限にするには弁護士に相談するほうが賢い選択といえるでしょう。

 

*取材協力弁護士: 銀座さいとう法律事務所 齋藤健博弁護士(弁護士登録以降、某大手弁護士検索サイトで1位を獲得。LINEでも連絡がとれる、超迅速弁護士としてさまざまな相談に対応。特に離婚・男女問題には解決に定評。今日も多くの依頼者の相談に多く乗っている。弁護士業務とは別の顔として、慶應義塾大学において助教も勤める。)

*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)

*画像:pixta(画像はイメージです)

齋藤健博 さいとうたけひろ

銀座さいとう法律事務所

東京都 中央区銀座2-4-1 銀楽ビルディング503E

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