弁護士に聞いた!刑務所の失態で脱走した受刑者が犯罪…被害者は損害賠償を請求することができる?

4月9日、愛媛県の松山刑務所から27歳の男性受刑者が脱走。付近の民家に押し入り財布と自動車を盗み、広島県尾道市に逃げ込んだ模様です。10日現在犯人は捕まっておらず、広島・愛媛両県警が捜査員を大量に動員し、行方を追っています。

今回刑務所の失態で受刑者を脱走させてしまい、犯罪被害者を出してしまったことになります。そうなると、被害を受けた側としては、当然刑務所やそれを管理する国に損害賠償を求めたいところ。そのようなことは可能なのでしょうか?

銀座さいとう法律事務所 齋藤健博先生に伺いました。

Q.刑務所の失態で脱走した受刑者に犯罪被害…損害賠償を求めることはできる?

 

A.国家賠償請求をできる可能性があります

国家賠償法

『第一条    国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる』

これは、国も不法行為責任を負い、損害賠償義務を負う根拠となるものなのです。ただし、国賠請求するには、実際に管理していた公務員の水準においても、損害を発生させることについて故意または過失が認められる必要があるのです(これを専門用語で職務行為基準説といいます)。

本件では、刑務所の施設の現実的な管理方法ですとか、実際執務にあたっていた公務員の管理の内容などが争点となるでしょう。また、実際に生じてしまった損害との因果関係も争われるでしょう。たとえば、近隣の飲食店が損害を主張しても、しっかり公務員が管理していれば、損害は発生しなかったんだとの因果関係を肯定できなければなりません。

実は、管理をしていた公務員個人に対しては原則として責任追及ができません。これを認めてしまうと、公務の委縮を招いてしまうからです。

ともあれ、今回のような刑務所からの『脱走者』は、怖い存在ですよね。管理側の請求をするにはハードルがありますが、あきらかにこれによって損害が生じたのであれば、国への賠償請求も視野に入るでしょう。

刑務所関係者には脱走者をこれ以上出さないようしっかりと管理してもらい、国には被害に遭われた方に対する謝罪と賠償をしっかりと行ってもらいたいものですね。(齋藤先生)

 

 

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)

*弁護士監修・執筆/ 銀座さいとう法律事務所 齋藤健博弁護士(弁護士登録以降、某大手弁護士検索サイトで1位を獲得。LINEでも連絡がとれる、超迅速弁護士としてさまざまな相談に対応。特に離婚・男女問題には解決に定評。今日も多くの依頼者の相談に多く乗っている。弁護士業務とは別の顔として、慶應義塾大学において助教も勤める。)

齋藤健博 さいとうたけひろ

銀座さいとう法律事務所

東京都 中央区銀座2-4-1 銀楽ビルディング503E

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