忘年会や新年会など飲み会が連日のようにある、という方も多いのではないでしょうか?
お酒の飲み過ぎが原因で気分が悪くなったり、中には嘔吐した経験がある方もいらっしゃるかと思います。突発的に吐き気を催したのか、トイレまで間に合わず……といった光景も見かけられますね。
今回はそんな、電車内での嘔吐について法的な観点から解説してみたいと思います。
まず、刑事上の犯罪になるかどうかですが、“故意に”嘔吐物を相手に引っかけた場合には、「暴行罪」、働いている人に同じようなことをすれば「威力業務妨害罪」になる可能性はありますが、そうでない限りは大丈夫です。
誰かの大事な物を嘔吐物によって使い物にならなくしてしまった場合は、「器物損壊罪?」と思うかも知れませんが、この罪は故意犯しか罰しませんので、やはり罪にはなりません。
また、嘔吐物が相当悪臭を放ちますので、迷惑防止条例の「悪臭行為に当たるのか?」と考えられる方もいるかと思いますが、基本的には当たりません。
ですので、電車内での嘔吐で、警察の世話になることはまずないと思っていただいて結構です。
では、民事上は何らかの法的責任が発生するでしょうか?場合分けして、個別に見ていきましょう。
■1 吐いた上に処理をしないことは?
吐いたものをそのまま放っておくと、当然の如く鉄道会社の方が清掃などの処理をすることになります。
嘔吐行為は、通常はお酒の飲み過ぎによっておきるもので、いわゆる不注意によって清掃などをさせる手間を発生させることになりますので、本来は損害賠償請求の対象になります。
ただ、通常、吐くような人は、既に自分の嘔吐物を処理することなどできないでしょうし、鉄道会社もそのことを見越して清掃の大勢を整えているようですので、特に損害賠償請求をしないそうです。
■2 誰か(人・物)を汚した場合
理屈は同じで、不注意によって嘔吐し、それによって誰かを汚してしまうわけですから、それによってクリーニング代が発生したり、その物が使い物にならなくなったりするわけです。従って、それに掛かった費用は、損害賠償請求されることになります。
■3 車内清掃で遅延などした場合
車内清掃で遅延した時間にもよるでしょうけど、通常の嘔吐物程度であれば、最短での時間によって清掃が可能でしょうし、損害を発生させるほどの遅れがでるとも思えませんので、特に遅延させたことそのものについて損害賠償請求されることはないものと思います。
*この記事は2014年6月に掲載されたものを再編集しています。
*著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)
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