忘年会で注意! 酔いつぶれた人を放置すると犯罪になることがある

年末年始は、忘年会や新年会等、年間を通じて最も飲み会の多いシーズンです。連日の飲み会に疲れているという方も多いのではないでしょうか。

さて、そのような飲み会につきものなのが、「酔いつぶれた人の介抱」です。実は、そのような泥酔者を放置して仮に自分だけ帰宅してしまった場合、保護責任者遺棄罪という罪に問われる可能性があります。

また、その場合に泥酔者が傷害を負ったり死亡したりすれば、保護責任者遺棄・不保護致死傷罪が成立する可能性があります。

保護責任者遺棄・不保護罪とは、「病者」を、「保護する責任のある者」が、病者を「遺棄」又は「その生存に必要な保護をしなかった」ことを処罰するものです。今回は保護責任者遺棄罪という罪について詳しく解説します。

お酒忘年会

■どのような場合に保護責任者遺棄・不保護罪が成立する?

まず、泥酔者が、「病者」にあたるかどうかは議論のあるところですが、「高度の酩酊者」を「病者」と判断した最高裁判例があります。

次に、泥酔者を「保護する責任のある者」とはどのような人を指すのでしょうか。 「保護責任」の発生根拠は、法令、契約、事務管理、慣習、条理、先行行為等、様々ですが、概ね、病者の生命・身体の危険を支配しうる地位にある者と整理することができるでしょう。

裁判例上、泥酔者を家まで送ると約束していた交際相手や、泥酔者を送っていくよう頼まれていた同僚、飲み会を主催しかつ泥酔者の帰宅に自ら同行しようとした上司、客からドリンクを奢られるシステムをとっている店の従業員が勤務中に泥酔した際の同店経営者等が、「保護する責任のある者」と認定されたことがあります。

 

●「遺棄」とはどんな行動?

さらに、「遺棄」とは、泥酔者を場所的に移動させるだけではなく、放置したまま立ち去ることも含みます。今回想定しているように、「保護する責任のある者」が泥酔者を放置して帰宅することも、泥酔者の生命・身体に危険が生じることをわかっていながらあえて放置したような場合は、「遺棄」に該当することになります。

裁判例では、泥酔者を踏切内に置き去りにした場合や、冬場に泥酔者を田んぼに置き去りにした場合等に、「遺棄」に該当することが認められています。

このように、忘年会・新年会シーズンは、夜冷え込みが厳しいことも考慮すると、泥酔者の生命や身体に及びうる危険は大きく、場合によっては「遺棄」に該当する可能性があります。

これからは、泥酔者に対して「 面倒だなぁ」など思ったとしても、しっかりしかるべき対処をするべきでしょう。相手の為にも自分の為にも……。

 

*著者:弁護士 鈴木翔太(弁護士法人 鈴木総合法律事務所)

鈴木 翔太 すずきしょうた

弁護士法人 鈴木総合法律事務所

東京都渋谷区恵比寿1-8-6 共同ビル4階・7階

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