課せられたノルマを達成できないと反省文を提出させたり、給料カットとする企業があるそうです。反省文はともかく、給料がカットされてしまうと生活に支障が出る恐れがありますから、避けて通りたいものだと思います。
しかしながら、中には違法な処分を行っている場合もあるようですので、給料カットについて、法的観点から解説してみたいと思います。
■ノルマ未達で給料カットは違法?
ノルマを達成できなかった場合に給料をカットすることは違法となる場合もあると考えます。
前提として、給料カットは労働条件に関わることですから、給料カットの要件・内容について、労働契約や就業規則や労働協約で定めていなければ認められません。
・労働契約や就業規則に定められていた場合
労働契約で給料カットの要件・内容を定めていたとしても、就業規則で定められた内容よりも労働者に不利であれば、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約なので無効です(労働契約法12条)。
就業規則は、使用者が事業場における労働条件や服務規律等を定めたものです。
就業規則に、営業ノルマ未達の場合の給料カットについて定めていたとしても、就業規則の労働条件が労働契約の内容となるためには、就業規則の労働条件が合理的であり、労働者に周知させていることが条件です(労働契約法7条本文)。
給料カットによって労働基準法や最低賃金法に違反する結果になる場合は当然違法ですが、そこまででなくてもノルマの内容や給料カットの程度が不合理な場合、たとえ就業規則で定めていたとしても違法です。
・労働協約は労働契約や就業規則よりも優先される
つぎに労働協約についてですが、そもそも労働協約とは、労働者組合と使用者との間で締結される労働条件等に関する協定のことです。
労働協約がある場合、個々の労働契約や就業規則よりも労働協約が優先されます(労働基準法92条1項、労働契約法13条)。
労働協約でノルマ未達の場合の給料カットについて定めていた場合でも、給料カットによって労働基準法や最低賃金法に違反する結果になる場合は当然違法となりますし、公序良俗に反する場合や特定の労働者だけを不利に扱うような不公平な内容であれば違法と考えます(民法90条)。
■ノルマ未達で降給の場合は?
次に、ノルマ未達の場合に査定で降給とする場合についてですが、これも労働条件に関わりますので同様と考えられます。
降給について労働契約や就業規則や労働協約で定めていなければ認められませんし、仮に定めがあったとしても労働基準法・最低賃金法に違反する場合は違法ですし、降給の要件・内容が不合理・不公平な場合には違法と考えます。
■給料をカットが適法となるのは稀
給料カットの要件・内容について労働契約・就業規則・労働協約に根拠があり、かつ給料カットの要件・内容の定めが合理的であり、実際の給料カットの手続も適切になされている場合です。
給料カットの根拠規定がなければそもそもダメですし、根拠規定があったとしても、給料カットの基準が曖昧であったり労働者に著しく不利であればダメです。
また、懲戒処分による減給も考えられますが、この場合も、就業規則で懲戒事由と減給処分が規定されていなければ認められませんし、減給については、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないとされています(労働基準法91条)。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
【画像】イメージです
*xiangtao / PIXTA(ピクスタ)
【関連記事】
* 管理職に昇進したけど残業代が出ないから給料は下がる…こんなのアリ?