高速道路での煽り運転は、全国で数件発生が報告されているほか、Twitterなどでは「自分もやられたことがある」と被害を訴える声が少なくありません。
仮にそのようなことを受けた場合、どのように対処すれば良いのか。また、相手を煽り運転の被害を警察に訴える場合はどうすれば良いのか。
弁護士の目線から、どのように対処すれば良いのか、エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に解説して頂きました。
■煽り運転にも様々な種類がある
「“煽り運転”と一言で表現しても、その態様には、進路妨害、幅寄せ、クラクション、パッシング、異常接近、追い回しなど、様々な態様のものがあります。
そして、その中でも、刑事罰の対象になるものとならないものがあるので、刑事罰の対象となるものに関して解説しようと思います。
まず、道路交通法上、煽り運転そのものを処罰するものとして、道路交通法において、
急ブレーキの禁止(24条)
車間距離の不保持(26条)
無理な進路変更(26条の2第2項)
駐停車禁止場所における停車(44条)
不必要なクラクション(54条2項)
高速道路上における停車(75条の8第1項)
が規定されています。
以下、各行為の罰則をまとめると、
・危険を回避する必要がないにもかかわらず急ブレーキをした場合には、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金(119条1項1号の3)
・車間距離を保持しなかった場合には、高速道路の場合には3月以下の懲役又は5万円以下の罰金(119条1項1号の4)、それ以外の場合には5万円以下の罰金(120条1項2号)
・無理な進路変更をした場合には、5万円以下の罰金(120条1項2号)
・高速道路以外の駐停車禁止場所における停車をした場合には、15万円以下の罰金(119条の2第1号)
・不必要なクラクションを鳴らした場合には、2万円以下の罰金又は科料(121条1項6号)
・高速道路上における停車をした場合には、15万円以下の罰金(119条の2第1項2号)
となっています。
また、幅寄せ行為については、暴行罪(刑法208条)に当たるとした裁判例もあります。(※1)
さらに、「人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」をして、人を負傷させた場合には15年以下の懲役。
人を死亡させた場合には、1年以上の有期懲役が科されることになります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条4号危険運転致死傷罪)。
これら煽り行為をされたことを証明するためには、ドライブレコーダーなどによって動画を残しておくことが一番有力だと思われます。
ただし、運転者が運転しながらスマートフォンなどによって録画をするのは、事故を起こす危険があり、運転者の遵守事項(道路交通法71条5号の5)に違反する危険性もありますので、自動車の運転中には、運転者は動画を撮らないようにしましょう」(大達弁護士)
■窓を開けずドアロックをして身を守る
では、煽り運転や煽り行為をされたときには、どのように対処したらいいのでしょうか?
「煽り行為をされた場合には、まず自身の身を守るようにしてください。煽り運転者は先に行かせるか、進路妨害をされたら減速して安全な場所に停車した上で、扉を開けられないようにしっかりドアロックをかけ、煽り運転者から求められても窓も決して開けず、速やかに110番をして警察に連絡しましょう。
自動車は便利な乗り物ですが、一歩間違えば凶器となりかねません。煽り運転をしないことはもちろん、されたとしても冷静に対応し、充実したカーライフを楽しんでくださいね」(大達弁護士)
ドライブレコーダーを用意し録画すること、危険が発生した場合はドアロックで外に出ず、速やかに通報。これが有効ということですね。
※1:東京高等裁判所昭和50年4月15日判決など
*取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
【画像】イメージです
*TTstudio / Shutterstock
【関連記事】