危険性が叫ばれていながら、逮捕者が耐えない薬物事件。最近も二世タレントがホテルで使用したとして逮捕され、芸能界に衝撃が走りました。
この事件については親の監督責任を指摘する声と、「もう成人なのだから親に責任はないのではないか」との意見で、賛否両論となっているよう。
離れて暮らしている場合はともかく、同居の場合、責任は発生するのではないでしょうか? あすみ法律事務所の高野倉勇樹弁護士に見解を伺いました。
Q.親と同居している息子が覚せい剤を使用…親が罪に問われることはある?
A.同居者が処罰されるのは「共犯」である場合に限られます。共犯とされる可能性がある場面はいくつかあるものの、相応の関与がなければ処罰されません。
「覚せい剤は、所持、譲渡、譲り受け、使用などが禁止されています。覚せい剤を所持又は使用していた人の同居者は、所持・使用に関与していたのであれば、共犯として処罰されます。
同居者が共同して覚せい剤を保管していたのであれば、“共謀”して“所持”していた共犯者として処罰されます。どの程度の関与があれば共謀があったといえるかは事件毎の事情によって異なります。
覚せい剤が自宅に持ち込まれることを知ってあえて許可していた場合(保管場所を提供した場合)には、共謀して所持していたと認定され、処罰される可能性が高いと思われます。他方、保管されていることすら知らなかった場合には、共謀していないと認定され、処罰されることもないでしょう。
また、“共謀”といえる程の関与はしていないとしても、覚せい剤の所持や使用を手助け(法律用語でいう“幇助”)したという程度に関与した場合には、共犯(幇助犯)として処罰されます。どの程度の手助けが“幇助”といえるのかは、やはり事件毎の事情によって異なります。
覚せい剤を秘密裏に使うために便利な部屋(完全防音の地下室など)をあてがったという場合、それだけでは幇助とはいえません。
その部屋が専ら覚せい剤を使用するために使われると認識していたような場合には、所持や使用の幇助が認められる可能性があります。
裁判になれば、検察官は、同居者も覚せい剤があると知りながら保管していたことや保管場所・使用場所を提供していたことなどを立証する必要があります。
その場合、同居者であることだけを立証して、“同居者なのだから、当然、保管されていることや使用されていることは知っていたはずだ”と主張するだけでは、共謀や幇助を立証できたことになりません」(高野倉弁護士)
親と同居していたとしても、共謀や幇助が立証されない限り、子どもの覚せい剤使用によって親が逮捕されることはないようですね。
*取材協力弁護士:高野倉勇樹(あすみ法律事務所。民事、刑事幅広く取り扱っているが、中でも高齢者・障害者関連、企業法務を得意分野とする)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
【画像】イメージです
*Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)
【関連記事】