外貨を不正に使用して買い物…どんな罪に?

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日本の硬貨と韓国のウォン硬貨は、非常に似ています。最近も、イベントなどでわざとウォンを混ぜ、金額を誤魔化す事件も起こっているようです。

韓国の通貨は日本では使えない(通用力がない)ものですから、使われる側にとっては迷惑なことでしょう。

このように他国の通貨を円と誤魔化して不正に使用した場合、どのような罪になるのでしょうか? 星野・長塚・木川法律事務所の木川雅博弁護士に、見解を伺いました。

 

■外国の通貨を使用したら罪になる?

「海外旅行で余った通貨を財布の中に入れっぱなしにしていた等の理由により、お店でうっかり外国の通貨で支払いそうになったことがあるかもしれません。少し昔には、変造された500ウォンを500円玉の代わりに自動販売機で用いられたという事件もありました。

このようにうっかりまたはわざと違う国の通貨で支払いをした場合、罪に問われてしまうのかについて簡単に解説したいと思います」(木川弁護士)

 

■わざと外国の通貨で支払ったときは犯罪が成立

「刑法をはじめとする刑罰法令は故意犯が原則で、特別規定がなければ過失犯は罪に問われません。以下で述べる取締法規において過失犯を処罰する規定はありませんので、うっかり(過失)ではなくわざと(故意)外国の通貨で支払いをしたときは犯罪が成立することがあります。

例えば、スーパーや飲食店において日本円と外国通貨を間違わせる方法で商品・サービスの提供を受ければ詐欺罪が成立しますし、上記の変造500ウォンを500円の代わりに自動販売機で用いたように機械の誤作動により利益を得た場合は窃盗罪が成立します

 

なお、故意に外国の通貨で支払いをした場合に限りませんが、偽札や通貨偽造などを規制する法律は刑法のほかにも、

・通貨及証券模造取締法(通貨の模造品製造を規制)

・紙幣類似証券取締法(紙幣類似の機能を有するものの発行規制)

・すき入紙製造取締法(すかしの入った紙の製造規制)

・外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造二関スル法律(偽造外国通貨流通行為等の規制)

があります。中には初めて知る法律もあるかもしれませんね」(木川弁護士)

 

■外国通貨での支払いが許される場合

「大手量販店、ホテル、外国人旅行者の多い地域の商店街などでは、外国通貨での支払いができます。また、クレジットカード決済の際に、日本円で支払うか外国通貨で支払うかを選べることもあります。

もちろん、このように外国通貨での支払いができる場合であっても、日本円で支払うと言ったのに誤って外国通貨での決済とされてしまったような相手に過失がある場合を除いては、為替レートによる差損の返金要求はできません。

ウェブ決済やビットコイン等の仮装通貨の流通に伴い、現在では必ずしも日本円で買い物をすることが必須ではなくなっています。

それに伴い、通貨に関する犯罪は、現金の偽造やつり銭詐欺という単純なものではなく、投資話・投資スキームに関する高度なものになってきていますので、皆さんは巻き込まれたり騙されたりしないように注意してくださいね」(木川弁護士)

 

「故意に」外国の通貨を使用した場合は、罪に問われることがあるようです。「うっかり」の場合は罪にならないとはいえ、無用なトラブルに巻き込まれないよう気をつけたいですね。

 

*取材協力弁護士:木川雅博 (星野・長塚・木川法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野・長塚・木川法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)

 

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