痴漢容疑で追い詰められて自殺…もし冤罪だったら遺族は損害賠償できる?

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満員電車での痴漢は毎日のように起こっていて、いまだに容疑者がレール上を走って逃げる事件が後を経ちません。

ほかにも色々な場所で痴漢犯罪は行われており、中には酔いつぶれて駅のホームで寝ている女性を介抱するフリして痴漢行為を働く者もいるほどです。

一方で、最近は痴漢も他人が疑われるよう、巧みに手を伸ばして痴漢行為を働き他人に罪をなすりつけたり、中には女性が男と組んで痴漢をでっちあげて恐喝する事件も報道されています。

 

■冤罪の汚名を苦に自殺を図った場合、遺族の損害賠償請求は認められる?

痴漢犯罪は、通常「迷惑防止条例」が適用され罰金刑となりますが、悪質な場合は刑法の強制わいせつ罪が適用され、最悪の場合は懲役です。

仮に冤罪で逮捕され、精神的に追い詰められた人が「冤罪だ」という遺書を残して自殺した場合、家族は無罪を信じて損害賠償を起こすことができるのでしょうか?

自身でも痴漢事件の弁護を担当された経験のある水田法律事務所・河野 晃弁護士に伺ってみました。

「一概に可能とは言い難いです。

痴漢の被疑者となって逮捕勾留されたとしても、被害者がその被疑者を真犯人であると信じて被害申告したのであれば、『虚偽の被害申告をした』という意味で故意はなく、また、過失を問うための材料にも乏しいケースがほとんどであると思われるからです」

そうなのです。たとえ冤罪だと言い張っても、被害者が痴漢に遭った、そしてその人が真犯人だと確信するそれなりの理由があるわけです。

そして、有罪が確定されている場合、損害賠償を起こすとしても、冤罪だという遺言だけで請求が認められるわけではないそうです。

河野弁護士によると、

「請求が認められるとしたら、被害者とされていた女性が、虚偽の被害申告をしたことが後に明らかになったケースでしょうね。

例えば示談金目的で、されてもいない痴漢をでっち上げたことが判明したケースであれば損害賠償が認められるでしょうね」

とのことです。

 

■物理的に痴漢行為に無理がある、証言があやふやな場合は取り調べ段階から冤罪を主張

ちなみに、河野弁護士が担当されたケースではどうだったのでしょうか?

「私は、残念ながら、痴漢事件で無罪を争ったことはありません。ただ、痴漢事件が特別なわけではありません。他の事件同様、無罪を争うケースを担当することがあるかもしれませんね。

もし、痴漢冤罪被害に巻き込まれた場合は、弁護士のアドバイスを受けるまでは迂闊にしゃべらないということを心掛けると良いと思います。独自の判断で事実に反する自白をするなど、もってのほかです」

痴漢犯罪で逮捕されると、悪質でなければ先に述べたように迷惑防止条例違反で略式裁判となり罰金を科されるケースが多いそうですが、絶対にやっていないと本人が主張する場合は法廷での裁判となります。

冤罪被害にあった場合は、最終的には法廷で白黒つけるよりほかありません。

卑劣な痴漢犯罪は残念ながら多くの女性が体験しており、犯人の逮捕には痴漢犯罪が多い満員電車などで鉄道警察をはじめ多くの関係者が地道な努力をしています。

しかし、中には先に述べたケースのように、巧妙に嵌められてしまう場合もあるのです。

その場合、自分がやっていないのが確かであれば、それを主張するしかありません。それと力になってくれる信頼のある弁護士に弁護を依頼して、最初から冤罪を主張していくこと。

そして女性の近くでは怪しまれる行動を控えること。痴漢行為はもちろん男として最低のことですので、絶対にしないことです。

 

*取材協力弁護士:河野晃 (水田法律事務所。兵庫県姫路市にて活動をしており、弁護士生活7年目を迎える。敷居の低い気軽に相談できる弁護士を目指している。)

*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。Twitterアカウントはこちら

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