AKB48の写真会参加のために学生証を偽造…どんな罪に?

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

アイドルグループの『AKB48 』の写真会に他人名義のチケットで参加しようとした少年のために偽の学生証を作成した疑いで48歳の男性が逮捕されました。

現在はプリンターやスキャナー、加工ソフト等の技術が進歩したことにより、誰でも比較的容易に身分証明書等を加工・複製することができるようになりました。

このような、いわゆる偽造行為を行い、特定の人しかサービスを受けることができないにもかかわらず、身分証明書を偽造し、書類上その者になりすまして、サービスを受けることがときどき見受けられますが、こういった行為がどのような法的問題をはらんでいるのか解説したいと思います。

 

■文書偽造について

まず、今回の偽造学生証についての解説をする前に、関わりの深い“文書偽造”について触れてみたいと思います。

そもそも偽造とは、その書類を作る権限がないにもかかわらず書類を作成することをいいます。厳密には、書類の作成権限がない者が他人名義の書類を作成することを指します。

偽造は有形偽造と無形偽造に分かれますが、一般的に前者は偽造、後者は虚偽文書の作成と呼ばれます。

 

■文書の種類について

そして、文書には公文書と私文書の2種類があります。

公文書とは、国や地方公共団体、公務員などによって作成する文書の事をいいます。公的機関が発行した住民票などの書類や公証役場で作成する公証人認証書などがこれにあたります。

一方で、私文書とは、国や地方公共団体・公務員以外の私人が作成した文書の事をいいます。私人が作った契約書や、入学試験の答案などがこれにあたります。

なお、文書に氏名や印影などが表示されていれば、有印公文書、有印私文書と呼ばれます。

 

■学生証を偽造したことによりどんな罪に問われるのか

さて、本題の今回の件について、まず文書の種類から見てみます。

問題となった学生証を発行している主体が国公立の高校の場合、学生証は公文書にあたります。一方で主体が私立高校の場合、私文書にあたります。そして発行した学校の印影等があるでしょうから、有印公文書または有印私文書となります。

次に、行われた行為は学生証の作成です。そして学生証の作成権限はその学校にしかなく、学校以外の者が作成すると、偽造にあたります。

生徒Aが在籍していることを示す学校名義の書類(学生証)を、学校でないのに作成した、というのが今回の犯罪行為です。

そして、これらの犯罪は、偽造した文書を「行使の目的」があることが必要なのですが、少年をサイン会に参加させようという目的があるので、「行使の目的」も認められます。

 

以上のとおり、行為者について、有印公文書偽造(刑法155条1項)又は有印私文書偽造(刑法159条1項)が成立します。

なお、有印公文書偽造は1年以上10年以下の懲役が、有印私文書偽造は3月以上5年以下の懲役に処せられます。

 

■他人名義のチケットを使用したり学生割引を受けたりする行為について

なお、偽造した学生証を利用して、他人名義のチケットを使用したり学生割引を受けたりする行為については、偽造行為とは別に犯罪が成立し得ます。

例えば、本来であればサイン会には参加することができなかったところ、偽造した学生証により主催者を欺き、サイン会への参加という利益を得たとして、詐欺罪(刑法246条)が成立することが考えられます。

今回の件で、偽造学生証を使用した少年に関しては、未成年であり少年法の適用がありますので、通常の刑事事件とは異なり、保護観察処分を受けたり、少年院送致という処分となります。

悪質な場合は検察官送致が行われる場合もあるでしょう。

 

*著者:弁護士 渡部孝至(弁護士法人はるかぜ法律事務所代表弁護士。『身近な弁護士』をモットーに、ご依頼者様の目線で親切・丁寧・迅速な対応を行い、リーズナブルなご費用で良質なサービスを提供することを使命としている。)

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