5年を超えて働けば期間の定めのない契約に変更?「無期転換ルール」とは

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何年も続けて1年単位の契約をして働いているけれど、いつ契約が打ち切られるか分からず常に不安と隣り合わせで働いている人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、そのような方々なら知っておきたい「無期転換ルール」について解説いたします。

労働契約の期間が無期限になることで不安が解消され、安定した生活を送るきっかけになるかもしれません。

 

■無期転換ルールとは

平成24年8月の労働契約法改正により「無期転換ルール」が設けられ(※1)、平成25年4月1日に施行されました。

「無期転換ルール」は、1年間などの期間の定めのある労働契約(有期労働契約といいます)が反復更新されて通算5年を超える場合に、労働者が使用者に期間の定めのない労働契約(無期労働契約といいます)を申し込むと、使用者が承諾したものとみなし、当該契約の終了後に、期間の定めのない労働契約に転換するというものです。

無期転換の申込みは、施行日以後に開始した有期労働契約の通算契約期間が5年を超える場合、その契約期間の初日から末日までの間にすることができます。

 

■定年後の雇用など例外もある

なお、「無期転換ルール」には、平成27年4月1日に施行された「専門知識等を有する有期雇用労働者に関する特別措置法」による特例が適用される場合があります。

これは、専門的知識等を有する有期雇用労働者と、定年後引き続いて雇用される有期雇用労働者について、一定の条件を満たせば、無期転換申込権が生じないというものです。

有期労働契約により働く非正規労働者は、企業にとっては雇用調整がしやすく、労働者にとっては様々な事情や価値観から多様な働き方の選択が可能となる等の理由から、平成29年1月から3月の全雇用者に占める非正規雇用労働者の割合は37.3%にもなります。(※2)

一方で、有期労働契約で働く人の約3割が通算5年を超えて有期労働契約を反復更新しており、「無期転換ルール」は、このような実態に対応し、企業にとっては業務の安定化、労働者にとっては雇用の安定に資するものとして定められました。

 

■正社員になれる制度ではない

ただし、「無期転換ルール」は有期労働契約を無期労働契約に転換する制度であり、派遣社員など非正規労働者を正社員などの正規労働者にする制度ではありません。

無期転換後の労働条件は、有期労働契約時と同一であることを原則とし、場合によって変更も可能とされていますが、当然ながら、労働条件の変更に関し、無期転換ルールの趣旨に反する場合や公序良俗に反する場合は、変更が無効と判断される場合があります。

「無期転換ルール」は、これまでの人事政策に大きな影響を与えるものであり、企業には、法改正の趣旨や内容を十分に理解した上で、契約更新の際の対策、雇用契約書や就業規則の見直しなどを検討し、有期労働者に対する適切な対応をとることが求められます。

 

※1:労働契約法18条1項

※2:総務省『労働力調査』より

*著者:弁護士渡辺祥穂丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士。「民事事件・刑事事件ともに、安心してお任せいただけるよう、皆様が抱えていらっしゃる不安や悩みをできる限りお伺いし、お一人お一人に丁寧に向き合い、対応させていただきます。」

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