夏のボーナスをもらってから転職をする人も多いため、この季節は転職のシーズンともいえます。
人材不足が続いている昨今では求人サイトを見ると数え切れないほどの求人募集がなされていることと思います。
ただ、例えば、経理の求人を見て応募し、転職を決めたのにもかかわらず、いざ入社という段階で経理ではなく営業を担当してほしいといわれた場合、どう対応すればいいのでしょうか?
Q.経理で応募したのに営業配属オファー……違法では?
A.求人広告そのものに法的拘束力はないため、違法とはいえず損害賠償などを行うことはできません。実際には新たなオファーを受け入れるか辞退するかの2択とならざるを得ません。
採用までのプロセスを分解すると、応募→面接→採用(内定)と3つに分かれるのが一般的であり、労働契約が成立するのは「採用(内定)」のフェーズです。
つまり、裏返していえば、応募や面接などの段階では、会社と応募者の間には何ら契約関係がないことになります。
応募を行う際には「求人広告・求人票」をまず目にすることになりますが、これらは法的には「労働契約の申し込みの誘引」というものに過ぎず、会社は法的にこれらの内容に拘束されることはないのです。
よって、内定時に求人票と違うオファーを出したとしても法的には完全に自由であり、この契約のオファーを受けるかどうかも労働者側の自由であるといえます。
新たなオファーは契約自由の原則の範囲内なので、損害賠償などを行うこともできません。
ただし、実際に入社した後で聞かされていた労働条件と実態とが異なる場合には、労働者はその雇用契約を即刻解約することが可能ですし、損害賠償を行う余地もあります。
*取材・文:ライター 松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。
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