天候不順や大災害が起きたら…裁判が中止になることってあるの?

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6月16日、仙台地裁で裁判中だった被告が突如傍聴席にいた警察官2人を刃物で刺すという前代未聞の事件が発生。世間に大きな衝撃を与えました。

警察官は命に別状がないとのことですが、男は計画的に刃物を持ち込んでいたようです。

今回のような事件は極めてレアケースですが、裁判所でも様々な「不測の事態」が起こりうります。例えば大災害に見舞われる、被告の体調が著しく悪化するなどして、予定されていた裁判ができないことがあります。

そんなとき、雨天時の野球のように「中止」とせざるをえませんが、関係者の予定もあり、そうもいかないとも思ってしまいます。

一体裁判の中止はできるのでしょうか? また、可能である場合どのようなケースで中止となるのでしょうか?

法律事務所あすかの冨本和男弁護士にお話をお伺いしました。

 

■裁判が中止になることってある?

「民事裁判の場合、天災その他の事故によって裁判所が職務を行い得ないような場合、中止となります(民事訴訟法130条)。

また、当事者が急に精神病となった場合にも、裁判所の判断により中止となる場合があります(民事訴訟法131条)。

刑事裁判の場合、被告人が心神喪失の状態のとき、被告人・重要証人が病気のために出頭できないとき、管轄指定・移転の請求があったときに中止となる場合があります。

ほかにも、忌避の申立(不公正な裁判のおそれがある場合に、当事者が担当裁判官や担当書記官に職務執行をさせないように申し立てること)があったとき、再審請求が競合したとき等に公判手続が停止となります(刑事訴訟法314条、刑事訴訟法規則6条、11条、285条)。

以上のような法律で明記されている場合の他にも、裁判所の裁判長には訴訟指揮権・法廷警察権がありますので(民事訴訟法148条、刑事訴訟法294条、裁判所法71条)、被告人や傍聴人が暴れたり、大規模な地震が発生した場合等に、訴訟指揮権・法廷警察権の行使として退廷を命じたり裁判を中止したりすることができると考えられます。

私が扱った裁判で、中止となった例は今のところありません」(冨本弁護士)

 

民事・刑事で若干異なるものの、中止になる条件はしっかりと決まっているようです。また、裁判長の権限で中止させることもできるそう。

なかなかないことではありますが、覚えておいて損はない知識ですね。

 

*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)

*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)

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