近年はバブル崩壊時、リーマンショック直後に比べると比較的景気のいい時期であるといえますが、それでも業種によっては慢性的に不景気な会社もあるようです。
このような会社でいきなり「業績悪化により給与を20%カットする!」と会社から通知を受けたとします。このように、一方的に会社が従業員の給与を引き下げることは違法ではないのでしょうか?
Q.いきなり賃金20%カットなんて違法では?
A.従業員への説明・同意なしに行われた賃金カットは違法です。
三井埠頭事件という判例がありますが、この会社は業績悪化に伴い会社更生法の適用を申請していましたが、従業員に対して一方的に賃金の20%カットを行ったため、この有効性が争われた事件です。
判例では、「労働契約における最も重要な要素である賃金を使用者が一方的に減額することは許されない」とし、会社側が敗訴することになりました。
会社更生法の適用となった会社ですら賃金カットが裁判で無効とされたのですから、単に業績が悪化しているからといって賃金を一方的にカットするのは違法であるということができます。
一方的に賃金をカットする前には、新規採用を控えたり、残業数や賞与額を減らしたり、会社としてできる限りの努力をすることが求められます。
その上で、やはり止むを得ず賃金を引き下げなければならない状況に陥ってしまった場合に、従業員と賃金引き下げに関わる交渉をするのが正しいプロセスであると言えます。
裏を返していえば、一方的ではなく従業員からの同意があれば、合意に基づき賃金を多少カットすることは可能です。
*取材・文:ライター 松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。
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