猿がカメラを奪って「自撮り」・・・著作権は誰のもの?

野生の猿が人間のカメラを奪い「自撮り」を行い撮影された画像が大人気となっています。しかし、人気の反面、その写真は誰のものなのか?ということが議論され、裁判にまで発展しているようです。

もしも日本で野生動物が自撮りを行うようなことがあれば、その写真の著作権はどこに属す事になるのでしょうか?

Monkey takes selfie

■誰のものでもない

写真であっても、自動証明写真などを除き、構図や撮影対象の選択・配置などによって、創作性が認められれば、著作物に該当し、写真の撮影者が著作権者となります。

しかしながら、現在の日本の民法では、権利義務の享有主体として、生存している自然人と法人しか想定されておらず、法人を除き、人間以外には権利義務の享有主体性がありません。

簡単にいうと、動物や物、植物などには権利も義務も帰属しないということです。

したがって、撮影したのは猿である以上、置き忘れたカメラの持ち主に著作権を認めることはできず、撮影した猿は権利を保有できないので、著作権者はいないと考えざるをえません。

もっとも、カメラを置き忘れたのではなく、意図的に猿に自分で撮影させる仕組み・状況を構築して、予定どおり、猿に撮影させることに成功した場合など、カメラ所有者が自分で撮影した写真と同視できる特殊事情がある場合には、カメラ所有者に著作権が認められる余地はあるかもしれません。

しかし、いずれにしても、権利享有主体性がない猿が著作権を保有することはあり得ません。

 

■原告「アマミノクロウサギ」?

一般の方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、かつて、日本でもアマミノクロウサギ事件という裁判がありました。

これは、1995年に鹿児島地裁で、奄美大島に生息するアマミノクロウサギなどの自然動物が原告となり、自然破壊につながる林地開発行為許可処分の取消し及び無効確認を鹿児島県に求めた行政訴訟です。

日本で初めて自然動物を原告にした訴訟として注目されました。

アマミノクロウサギ事件をきっかけに、その後も、オオヒシクイや佐賀県諌早湾に住むムツゴロウ、ハマシギ、ホンドギツネ、ホンドタヌキ、ギンヤンマ、カネコトテタグモ、ワレモコウ、ムササビ、オオタカなどを原告とした訴訟が全国各地で提訴されました。

しかし、現行法では自然動植物には訴訟の当事者能力も権利享有主体性も認めていないため、これらの訴訟はすべて不適法却下(いわゆる門前払いで事件内容を審理しないこと)されています。

自然動植物の権利主体性を巡る議論自体は、アメリカなどでも古くから議論されており、これを主張する環境保護団体や動物愛護団体もありますが、日本では、自然動植物の権利は認められていないのが現状です。

 

裁判は残念ながら不適法却下になりましたが、アマミノクロウサギ事件で環境問題が再認識され、少しでも他地域の自然破壊抑止につながったのであれば、アマミノクロウサギも原告になった甲斐があったのかもしれません。

 

*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中 国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)
画像:File:Macaca nigra self-portrait large.jpg – Wikimedia Commons

星野宏明
星野 宏明 ほしのひろあき 弁護士

星野・長塚・木川法律事務所

東京都港区西新橋1‐21‐8 弁護士ビル303

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