沖縄で宅配郵便業をてがける運輸会社の運転手が、ダイレクトメール約500通を破棄していたことが明らかになりました。
最近では、再配達や宅配便の利便性の向上から、運送業界の負担が増加している傾向にありますが、こういった行為はどのような法に触れるのでしょうか。解説していきたいと思います。
■民事上も刑事上も違法
結論からいうと、送り主のダイレクトメール(荷物)を配達せずに廃棄している以上、民事上も刑事上も違法となります。
民事の面では、損害賠償責任を負うことになりますが、捨てたドライバーが直接荷主に対して損害賠償責任を負う他、運送会社もドライバーの不法行為につき使用者責任(民法715条)を負い、賠償義務があります。
ダイレクトメールを配達せずに捨てたドライバーは運送会社の業務を履行する者なので、運送会社は荷主に対して運送契約上の債務不履行責任として賠償義務を肯定することもできます。
いずれにしても、民事上の賠償責任が発生することになります。
■刑事上の責任
ドライバーがダイレクトメールを配達せずに廃棄した行為は、刑法上、いくつかの罪と関連します。
可能性があるのは、信書隠匿罪、(業務上)横領罪、窃盗罪、器物損壊罪、私用文書毀棄罪などですが、結論からいうと、器物損壊罪のみ成立すると考えられます。
まず、ダイレクトメールは基本的には「信書」に当たらない場合が多いので、信書隠匿罪にあたる可能性は低いです。
横領罪や窃盗罪は、不法領得の意思という物を自己の所有物とする意思が必要であり、廃棄目的の場合には成立しません。
私用文書毀棄罪にいう私用文書とは、権利義務に関する文書をいいますので、やはりダイレクトメールは基本的に該当しないことになります。
したがって、ドライバーがダイレクトメールを配達せずに廃棄した行為は、刑法上の器物損壊罪となります。
ただし、運送会社が荷主に謝罪し、自主的に補償するなどした場合は、実際には刑事事件としては立件しない可能性も高いでしょう。
再配達や荷物量の急増による輸送網の疲弊が大きな問題ともなっており、対策が求められるところだと思います。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)
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