念書の法的効力はある?バンジージャンプで死亡したら責任はどこへ?

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

ようやく寒さも落ち着き、過ごしやすい気候になったと感じる人も多いのではないでしょうか。

暖かくなると、アウトドアの活動も増え、郊外でキャンプやハイキング、山登りなどをする機会も増えるかと思います。

中には、スカイダイビングやバンジージャンプといった危険の伴うレジャーを楽しむ方もいるかと思います。

上記のようなレジャーを楽しむ際には、運営側から、事故が起きてしまった場合、責任は参加者にあり、運営側は責任を負わないといった内容の「念書」を提出することになろうかと思います。

事故が起きず、無事に終わればよいですが、怪我をしたり、最悪の場合には死亡してしまうこともあるでしょう。

 

そういった場合でも、念書を提出している以上、責任は参加者が全て負うことになり、運営側に責任は問うことが出来ないのでしょうか? 解説してみたいと思います。

 

■刑事責任が発生しないこともありえる

まず、刑事上の責任ですが、参加者が怪我をしたり、死亡したりした場合、運営者は、業務上過失致死傷罪(刑法211条)に問われる可能性があります。

もっとも、形式上は犯罪の要件に該当する場合であっても、有効な「被害者の同意(承諾)」があれば、行為の違法性が阻却されて犯罪は成立しないとされています。

そのため、自分は怪我をしても構わないということを承知で参加し、事故で怪我を負った場合には、行為の違法性は阻却されて運営者には犯罪が成立しないことになります。

ただし、同意が有効になるためには、運営者が、参加者から念書を提出してもらうだけではなく、参加者に対して、事前に当該レジャーの危険性や事故が起こった場合の怪我の程度等について十分に説明義務を尽くしていることが前提です。

一方で、生命を放棄するような同意は許されないので、仮に、自分は死んでも構わないことを承知でレジャーに参加し、結果、死亡してしまった場合には、そのような同意は無効なので、被害者の同意の法理では違法性は阻却されません。

もっとも、被害者の同意が無効であったとしても、当該レジャーの危険性について社会に広く認識されているような場合には、社会的相当性の観点から違法性が阻却される余地があります。

 

■損害賠償責任はどうなる?

次に、民事上の責任ですが、運営者は、不法行為(民法709条)や債務不履行(民法415条)に基づく損害賠償責任を負う可能性がありますが、刑事責任と同様に、被害者の有効な同意があるか、そのレジャーが社会的に相当なものであれば、違法性が阻却されて賠償責任が発生しないということになります。

まさか自分が事故に遭うはずがないと思ってレジャーに参加される方がほとんどかと思いますが、万一、事故に遭って怪我等をした場合には運営者の責任を追及できない可能性がある、ということを十分に認識したうえでレジャーに参加するようにしてくださいね

 

*この記事は2015年5月に掲載されたものを再編集しています。

*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)

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理崎 智英 りざきともひで

高島総合法律事務所

東京都港区虎ノ門一丁目11番7号 第二文成ビル9階

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