■SNS利用によって損害賠償を被ってしまう?
もし、自分がSNSによって、「会社の秘密情報」や「顧客のプライベート情報」を流してしまったら、どうなるのでしょうか?
例えば、従業員は、会社に対して、損害賠償を支払う義務を負うのでしょうか?
■損害賠償の義務は負う…でも全額ではない
会社から従業員に対する損害賠償請求については、これまでに多くの事件がありました。結論からいうと、従業員は会社に対し損害賠償債務を負いますが、会社が被った損害全額を支払う義務はありません。
まず、従業員が会社に対し、損害賠償債務を負うという点ですが、従業員がSNSによって、会社の秘密情報や顧客のプライベート情報を流してしまうことは、会社との間では、労働契約上の義務に違反することになります。
そして、それにより、会社に損害をあたえた場合は、契約違反として損害賠償責任を負うことになるのです。
しかし、これは資力に乏しい従業員にとって、過酷な結果になりかねません。
そもそも従業員のミスは、会社の責任もあるのではないか…ということで、
判例では、信義則(民法1条2項)に基づき、会社の従業員に対する損害賠償責任を制限するのが通例です。
■従業員のSNS利用により、炎上した場合の損害賠償額って、いくら?
従業員によるSNS利用により、会社(サービス)が炎上した場合について、会社としては以下のような損害が生じることが考えられます。
- サービスの休業による損害
- 謝罪広告費
- 再発防止の構築費用
従業員は、上記の損害を支払うことになります。
もっとも、従業員のSNS利用については、うっかり投稿してしまい、炎上するということがほとんどだと思いますので、次でみるように、会社からの損害賠償請求は、減額されることが通常です。
■従業員は、いくら払わないといけないの?
それでは、従業員は会社に対して、いくら支払わなければいけないのでしょうか?
この点については、主な考慮要素としては、以下の3つが挙げられています。
- 従業員の帰責性(故意・過失の有無・程度)
- 従業員の地位、職務内容、労働条件
- 損害発生に対する会社の寄与度(指示内容の適否、保険加入による事故予防・リスク分散の有無等)
例えば、従業員が故意に会社に損害を与えたような場合には、従業員への賠償は制限されません。
よって、従業員が会社のお金を横領したような場合には、会社は従業員にとして、全額請求することができます。
一方、従業員のミス(過失)によって、損害賠償をされてしまった場合、会社からの損害賠償請求は制限されることが多いです。
重大な過失が認められるケースでも、事情を考慮して、従業員の責任を、全損害額の4分の1や2分の1、場合によってはそれ以下に制限されることが多いです。
■会社情報をSNSで、むやみに投稿することは止めよう!
以上のように、従業員としては、何気なく利用したSNSで、会社が損害が被った場合には、全額ではないにしろ会社に対して、損害賠償を支払う義務が生じることになります。
従業員としても、会社の秘密情報や顧客情報などの会社の情報を、むやみに投稿することは止めましょう!
*著者:弁護士 中野 秀俊(グローウィル国際法律事務所。弁護士になる前、システム開発・インターネット輸入事業を起業・経営。IT・経営・法律に熟知していることから、IT・インターネット企業の法律問題に特化した弁護士として活動している。ブログ「IT・インターネット法律ブログ」)
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