ネットショッピングを利用した場合、商品は宅配便で送られてきます。荷物を受け取れなかった場合、多くの業者では再配達を依頼することができます。
しかし、「再配達を依頼したけれども受け取れなかった」という状況が続くことは、宅配業者、特に現場の配達員の負担になります。昨今は、再配達による現場の負担が社会問題ともなっています。
では、再配達してもらっても受け取れなかった、ということが続いた場合、荷物を受け取る側が宅配業者から訴えられるようなことがあるのでしょうか。
今回はその点について解説していきたいと思います。
■訴えられる可能性は低い
結論から言うと、訴えられるということは、考えにくいと言えます。
宅配便を利用する場合、送り主(荷送人)が宅配業者(運送人)との間で運送契約を締結します。荷物を受け取る人(荷受人)は、契約には関与しません。
契約に関与していない荷物を受け取る側は、運賃を支払う必要はありません。
それは、何度も再配達を依頼したり、結局荷物の受け取りがされずに送り主側に返送された場合も同様です。契約をしていない以上、運賃を支払う義務はないのです。
なお、運送契約に適用される約束事(正確には約款といいます)には、大抵の場合、受け取り側が荷物を受け取らず、送り主に返送することになったときは、返送費用などを宅配業者が送り主に請求できる、とされています。むしろ訴えられる(追加費用を請求される)可能性があるのは、送り主です。
■受け取り側が絶対に訴えられないというわけではない
とはいえ、受け取り側も訴えられる可能性がゼロというわけではありません。
まず、結局荷物を受け取れず荷物が送り主へ返送された場合に、送り主が宅配業者へ追加費用を支払ったときは、送り主から追加費用と同額の請求を受ける可能性があります。
ただし、この追加費用はさほど高くないと思われます。この費用を取り立てるためだけに裁判を起こすということはあまり考えられません。商品代金に費用が上乗せされた請求を受ける、ということはあり得ます。
また、「受け取れないかもしれない」と思いつつも、「まあ、いいか」と再配達を依頼し、宅配業者に損害を与えれば、不法行為による損害賠償を請求される可能性があります。
急な用事で外出して受け取れなかったという場合でも、再配達が受け取れないと思いつつ外出するでしょうから、理論上は、故意又は過失があるということで、損害賠償責任が発生する可能性があります。
ただし、損害額の算定が難しかったり、算定できたとしても低額であったりするので、宅配業者は、費用と時間をかけてまで裁判はしないでしょう。裁判よりも、運賃を値上げして再配達によるコストをカバーしたり、再配達を依頼できる回数を制限してコストを抑えたりすると思われます。
このように、荷物を受け取る側が損害賠償を請求されるケースはまれだと思われます。ですが、受け取る側も、あるときは荷物を送る側になるでしょう。
そのときは損害賠償を請求されずにラッキーと思えるかもしれませんが、運賃の値上げやサービスの低下によって、めぐりめぐって損をすることになります。再配達の依頼をしたのに受け取れないという場合には、再配達をキャンセルして別日を指定するのが正解です。
*著者:弁護士 高野倉勇樹(あすみ法律事務所。民事、刑事幅広く取り扱っているが、中でも高齢者・障害者関連、企業法務を得意分野とする)
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