広島県福山市の病院で、医師が統合失調症患者に対し、治療に必要ないと思われるパーキンソン病治療薬を多量に投与し、患者が体調不良を訴える事案が発生。
当該医師が投与を指示した理由として「薬の使用期限が迫っていたことがきっかけ」などと発言していることが判明。この件について、ネットユーザーから「怖すぎる」「不適切な診察だ」と批判が集中しています。
すでに医師は退職しているそうですが、投与について「効果があると思った」と話していることも報じられるなど不明瞭な部分が多いため、説明責任を問う声などがでています。
事態を受けた広島県は病院に対し立ち入り検査を行いましたが、医師に対する処分などは発表されていません。今後、この医師に対して罪を問うようなことはあるのでしょうか?
医療問題に詳しい三宅坂総合法律事務所の伊東亜矢子弁護士に意見を伺いました。
■罪に問われる可能性は……
「報道されている内容だけからは詳しい事情は分かりませんが、もし、“在庫処分”の目的だけで、全く効用のない薬を(そうと分かっていながら)投与した場合で、患者さんが傷害を負ったり、場合によって死亡してしまったようなケースでは、業務上過失致死傷罪が問題となると考えられます。
敢えて患者さんに死傷の結果を生じさせようとした、或いは死傷の結果が生じても構わないと思っていた、などの場合はさらに、過失ではなく故意の“傷害罪”“殺人罪”に当たり得るともいえますが、“故意”の立証は難しい可能性があります。
本件では、報道によれば、当該医師が『効果はあると思った』と供述されているようであり、実際にその点の医学的評価がどうなのか(現に投与を受けた患者さんに対する効果は医学的にみておよそあり得ないのか、場合によっては効果があり得るのか等)は気になるところです。
仮に、効果は全く無く、かえって有害、といったことが明らかな投薬なのだとすれば、病院全体の管理体制の問題も考える必要がありそうです(報道によれば薬剤部でおかしいとの指摘はされたようですが、結局投与に至ってしまってはいるので)。
なお、医師が『効果が全く無いと知って当該薬を処方した』場合は、診療報酬の不正請求(詐欺)等の問題も生じ得るところです」(伊東弁護士)
このようなことが起こるのは残念。大多数の医師の皆さんは額に汗して懸命に医療の現場で奮闘していると思われますが、今後このようなことが起こらないようお願いしたいものです
*取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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