TV番組で紹介された健康法を実践したら健康被害…賠償請求できる?

3月、NHKの生活情報テレビ番組が糖尿病の治療について事実と異なった情報を流し、謝罪する一幕がありました。健康被害などは報告されていませんが、実際に番組を見て実践しようとした人もいたようです。

生活お役立ち番組や医療を扱った番組はこれまでも数多く放送されており、納豆やココアなど、番組で取り上げられたことをきっかけに品薄状態になるほど売れることもありました。

本当に健康になることができるのなら良いのですが、なかには今回のように後に誤っていることが発覚し、番組が打ち切りになったケースも発生しています。

仮に番組内で紹介された健康法を実践し、体調不良や病気になった場合、謝罪だけでは納得いかないでしょう。

放送したテレビ局に治療費はもちろん、慰謝料や損害賠償を請求したいところ。そのようなことは、可能なのでしょうか?

ともえ法律事務所の寺林智栄弁護士に見解をお伺いしました。

 

Q.テレビ番組が間違った健康法を紹介し、実践して健康被害がでた場合、テレビ局に損害賠償請求できますか?

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

A.放送内容によりますが、かなり難しいと思われます。

「放送内容にもよりますが、原則的には損害賠償請求の対象にはならないと考えます。損害賠償の請求が認められるためには、(1)他人の権利利益の侵害、(2)これに対する故意又は過失、(3)故意または過失と発生した損害の間の因果関係という要件をすべて満たす必要があります。

仮に、放送された健康法が誤ったものであり、放送局側に過失があるとしても、実際に発生した健康被害、これに基づく損害の発生との間に因果関係を認めることが難しいと思われるからです。

例えば、なんらかの運動法が紹介されてこれを実践した後に、負傷したというケースでも、そもそも実践した人に疾患があった場合には因果関係は認めにくいでしょう。

何らかの食品を摂取する健康法が紹介されてこれを実践した後に、体調を崩したというケースでも、当時の体調や、過剰摂取、元々持っていた疾患などが関わっているケースもありえ、やはり因果関係を認めることは難しいのではないかと考えられます。

但し、かなり詳細に健康法が紹介され、それを忠実に再現したこと、他に健康被害が生じる原因がなかったこと、これらを全て証明できた場合には、損害賠償請求が認められる余地があります」(寺林弁護士)

 

健康被害が生じる原因が他に考えられないことを立証できるうえ、紹介された健康法を忠実に再現したとみなされた場合は損害賠償請求が認められる可能性がでてきますが、健康被害と放送との因果関係を立証することが困難と思われるため、基本的に損害賠償を請求することは難しいようです。

「テレビが言っているから正しいだろう」ではなく、「間違っているかもしれない」と注意深く話を聞くことが重要かもしれません。

 

*取材協力弁護士:寺林智栄

*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)

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*Yoshi / PIXTA(ピクスタ)

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