2月28日午前7時頃、小田急小田原線・小田急相模原駅で体が当たった、当たらないをめぐって女性が2人が口論。止めに入った男性にも暴言を吐くなど大暴れで、10分遅延することに。
さらに遅延の影響で電車内に人が殺到したため、ドアに圧力がかかり故障。長時間の運転見合わせを余儀なくされ、大混乱に陥りました。
■電車遅延による遅刻は「正当」とされるが……
都市部ではわずか数分でもダイヤが乱れてしまうと、そのほころびから一気に遅れが広がることが多々あります。
また、最近はJR東日本上野東京ラインのように、最大で静岡県の熱海駅から栃木県の黒磯駅までというように、区切られていた区間が直通となったため、遅延の影響をより多くの人が受ける環境になりました。
当然ながら、朝に電車が遅延した場合、始業時間に間に合わないケースも多々発生します。企業では「電車遅延」による遅刻の場合は遅延証明書を添付して届けを出せば「正当な理由」として認められることがほとんどです。
しかし、これが続くと「遅れるのがわかっているなら早めに家を出ろ」「何回同じことを繰り返すんだ」となんの罪もなく、列車遅延の影響を受けて遅刻した人間が責められることもあります。
場合によっては、「このままなら減給」などと厳しく指導されることもあるそう。しかし、本来悪いのは遅れた電車なのですから、会社側の言い分は理不尽すぎますし、減給は違法に思えます。
法律的に見てこのようなケースは許されるのでしょうか? ピープルズ法律事務所の森川文人弁護士に見解を伺いました。
■恒常的に遅れている場合は通勤手段を変える必要性あり
「電車の遅延……ノーワーク・ノーペイなんだから、どんな理由であろうと遅れて働く時間が減った以上、仕方ないのでは? という発想があります。
判例(平成5年3月4日東京地裁)も
「電車遅延を理由とする原告の本件各遅刻は、自らの努力又は選択により容易に回避し得るのに、その努力を怠り、又は、あえて自己の個人的都合を優先させて通勤手段を選択していたことの結果にすぎず、特別休暇事由があるということはできない。
原告は、遅刻の理由が通勤電車の遅延であるという一事で特別休暇事由に該るかのように主張するが、原告が利用していた京成線の運行の実状が前記認定のとおりである以上、少なくとも原告の選択した通勤手段に関する限り、遅刻は恒常的であったといえる。
原告は、右主張の前提として、電車の運行予定表の信頼性を強調するが、初めて当該電車に乗車する者であればともかく、原告は、日頃これを通勤手段として利用していたのであるから、前示の程度の遅延は当然に予測した上で通勤方法を選択すべきであったということができ、電車が運行予定表との関係で遅延したといっても、これを「事故」と観念することは到底困難である。」
なんて厳しいものもあります」(森川弁護士)
やはり「遅れることがわかっているなら、回避できるような通勤をするべき」という考え方は一理あるようで、裁判所もそのような見解を示しているそうです。
恒常的に遅れているにも関わらず遅刻をし続けている場合、それを注意することは違法ではないようです。
■減給をちらつかせることは?
それでは電車遅延の遅刻連発について減給をちらつかせる行為はどうなのでしょうか?
「企業によっては、遅延証明書により、遅刻扱いしない、という労使協定等を結んでいる場合もあり、労働者(組合)と企業の力関係に左右されるともいえます。
現実的には、ほぼ不可抗力なような場合の電車遅延もあるわけですから、一律に遅刻扱いするのはおかしいわけで、そのような運用を変更させるよう働きかけることが重要でしょう」(同前)
電車遅延による遅刻が常態化している場合は改善する義務があるようですが、不可抗力的な遅延のみでちらつかせるのは、好ましくない行為ということですね。
辛いかもしれませんが、恒常的に遅れている電車を通勤に利用している場合は、間に合うような時間に起きるなどして、余裕を持って通勤するよう心がけましょう。
*取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
【画像】イメージです
*papa / PIXTA(ピクスタ)
【関連記事】
*有給取得で「査定に響く」「賞与が減る」…法的に問題はない?