相続はお金や土地といった大きな資産が動くので、トラブルになりやすいと言われています。
元々は仲の良かった兄弟や親族も、相続のトラブルが原因で不仲になるケースは数えきれないほど存在しています。
さて、今回は、母親が遺産の全てを長男に相続させるという内容の遺言を作成して死亡したが、遺言作成時、母親が認知症にかかっていた場合について解説してみたいと思います。
遺産を相続できなかった二男としては、当該遺言は無効だと主張して、法定相続分どおりに遺産を相続することはできるのでしょうか。
■遺言書作成の際には「遺言能力」が必要
法律上有効に遺言を書くためには、遺言者に「遺言能力」が備わっている必要があります(民法961条~963条)。
遺言能力とは、自分の書いた遺言によってどのような効果が発生するのかを理解し、判断することができる能力のことです。
■認知症の程度や遺言の内容によって有効性は異なる
軽い認知症に過ぎない場合には、遺言の内容を理解し、自分が書いた遺言によってどのような効果が発生するのかを理解したり、判断したりすることが可能な場合もあるでしょう。
そのため、認知症だからといってストレートに遺言能力が否定されるわけではなく、遺言能力が認められるか否かは、認知症の程度によってケースバイケースということになります。
さらに、一言に遺言といっても、今回のように「遺産を全て相続させる」という簡単なものから、相続人が複数いて財産も多数ある複雑なものまで千差万別です。
簡単な内容であれば、認知症の程度が多少重くても、遺言の内容について理解することが可能な場合があるので、遺言能力が認められる場合があります。
逆に、複雑な内容であれば、認知症の程度が軽くても、遺言の内容を全て理解することが困難な場合があるので、遺言能力が認められない場合もあります。
以上のとおり、認知症の方が書いた遺言の有効性は、認知症の程度と遺言内容(内容の複雑さ)によってケースバイケースで決まるということになります。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)
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