深夜になると電車・バスとも営業が終わり、頼みとなるのはタクシーだけ。飲酒した場合、自動車・バイク・自転車に乗ることはできませんから、代行運転を除けば唯一の移動手段になります。
大都市では駅にいけば必ずタクシーがいるものですが、そうでない地域の場合探すことに苦労するもの。電話して呼ぶこともできますが、その場合高くつくため経済的ではないだけに、大きな道路にでて通るのをひたすら待つ人もいることでしょう。
やっと客が乗っていないタクシーが来て、手を挙げたのに無視された。あるいは、止まったにもかかわらず、運転手に「お客さん、近距離は勘弁してよ」といわれ乗車拒否された。
バブル時代にはこのようなことも多く、万札をちらつかせないとタクシーが止まらなかったという逸話もあります。しかし、本来このような客の乗車を拒否する行為は法律違反なのではないのでしょうか?
Q.タクシーの乗車拒否は法律違反になる?
A.なります。ただし、正当に拒否できる場合もあります。
道路運送法を第十三条に以下のような規定があります。
「第十三条 一般旅客自動車運送事業者(一般貸切旅客自動車運送事業者を除く。次条において同じ)は、次の場合を除いては、運送の引受けを拒絶してはならない。
一 当該運送の申込みが第十一条第一項の規定により認可を受けた運送約款(標準運送約款と同一の運送約款を定めているときは、当該運送約款)によらないものであるとき。
二 当該運送に適する設備がないとき。
三 当該運送に関し申込者から特別の負担を求められたとき。
四 当該運送が法令の規定又は公の秩序若しくは善良の風俗に反するものであるとき。
五 天災その他やむを得ない事由による運送上の支障があるとき。
六 前各号に掲げる場合のほか、国土交通省令で定める正当な事由があるとき。」
したがって、上記6ケースにあてはまらない場合に客の乗車を拒否することは、道路運送法違反。同98条6項により、100万円以下の罰金が課せられます。
では、この6つのケースに該当する行為とは具体的にどのようなものなのでしょうか?主な事例は以下のとおりです。
1.安全のために乗務員から指示されたことに従わない
2.定員オーバー
3.積雪にもかかわらずチェーンがない
4.乗車時に暴力や威嚇行為があった
5.道路の損壊、洪水などにより走行が困難
6.泥酔または不潔な格好をし、他の乗客に迷惑をかける可能性がある
上記は代表的な事例で、これ以外にもタクシー乗務員が正当に乗車拒否を行えるケースがあります。正当な理由があれば乗車拒否も許されるということを覚えておいてください。
*記事監修弁護士:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
【画像】イメージです
*Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)
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