福岡県の小倉北警察署に勤務する警察官が、結婚していることを隠して、交際をしていた女性との披露宴を開こうとして、減給の懲戒処分を受けたことが明らかになりました。
披露宴当日になっても、新郎である警察官側の出席者側が1人も現れず、新婦側の親族が問いただしたところ、嘘が発覚したということです。
それでは、新婦側は、男性に対して法的にどのような請求ができるのでしょうか。また、今回は、披露宴だけで婚姻届は提出していなかったようですが、仮に、婚姻届まで提出していた場合の法的問題点について説明したいと思います。
■新婦の男性に対する法的な請求について
男性とは披露宴まであげていますので、新婦と男性との間には、婚約(婚姻予約)が成立しています。
そして、婚約を不当に破棄した場合、破棄した当事者は、相手に対して、損害賠償義務を負います(民法709条)。
婚約を破棄された当事者が請求できる損害としては、慰謝料、披露宴の費用、婚約指輪代、新居の準備費用などが挙げられます。
慰謝料の相場としては、100万円から200万円です。
■婚姻届まで提出していた場合の法的問題点について
まず、民事上、配偶者のいる人は、重ねて婚姻することはできないと定められています(民法732条)。
そのため、婚姻届を提出して女性との間に婚姻が成立した場合には、そのような婚姻は不適法なものであり、取り消すことが可能です(民法744条1項)。
この場合、当事者に限らず、男性の本来の配偶者も、取消しを請求することができます(民法744条2項)。
次に、刑事上は、重婚罪が成立します(刑法184条前段)。法定刑は、2年以下の懲役です。
もっとも、すでに結婚している人が婚姻届を提出した場合、戸籍事務担当者は、当然、その人の戸籍を確認するので、その人が結婚しているかどうかは一目瞭然であり、そのような婚姻届は受理されません。
そのため、現在の戸籍実務上、重婚状態が生じるのは、戸籍事務担当者が戸籍の記載を見落としたなどのかなり例外的な場合に限られるでしょう。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)
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