「明日から10日間出張してきて!」突然の長期出張命令を断ることはできない?

30代のSさんは、大型店舗に設置されているPOS(レジ)システムの運用保守の仕事をしていますが、出張の多さに悩んでいます。

オープン前には1週間程度現地で付きっきりで使い方を指導し、その後3日間立ち会い。このサイクルでいくと、だいたい10日程度は泊まり込みになるそうです。

しかもかなり人数が少ないようで、5人程度で賄っているとのこと。自分の知らないところで出張が決まっていることがあり、出社してみたら「明日から群馬県に10日間出張して」と言われたことがあるそうです。

Sさんはそのせいで彼女とのデートもままならず、法事や結婚式などの冠婚葬祭の予定も立てることができずにいるとのこと。いくら仕事とはいえ、突然の長期出張命令は出来れば避けたいもの。

このような場合、正当に断ることは出来ないのでしょうか?諏訪坂法律事務所の多田幸生弁護士に見解を伺いました。

 

Q.突然命令された10日間の出張を断ることはできますか? 違法ではありませんか?

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

 

A.違法になる場合があります。

「俗に、“会社は労働者に対し出張を命ずる権利を有しており、労働者はこれを拒否できない”と言われることがありますが、必ずしも正しくありません。

労働契約上、会社に出張命令権限がないということは十分ありえます。また、会社に出張命令権限がある場合でも、あらゆる出張命令が許されるわけではありません。例えば、業務上の必要性がないのになされた出張命令は、権利の濫用であり、違法です。

このケースの場合、10日間というのはかなりの長期ですから、そのような長期出張を命ずるだけの業務上の必要性があったのかどうかが問題となります。必要性に乏しい長期出張だった場合、違法となる可能性があります。

また、出張が“10日間”ということは、土日を挟むことになります。もし、この人が出張中の土日も働くよう命令されているのであれば、それは実質的には“休日出勤命令”ということになります。この休日出勤命令についても、業務上の必要性がないのになされた場合は権利の濫用であり、違法です。

“明日から”という急な命令だったのですから、この人にはこの人なりの土日の予定があったことでしょう。会社には、この人の予定を無視してまで休日出勤を命じなければならないような必要性があったのでしょうか。もしなかったのであれば、違法となる可能性があります。

なお、会社が休日出勤命令をするためには、就業規則やいわゆる“36協定”に休日出勤についての規定があることが必要です。

もし、就業規則や36協定に規定がない場合、会社はあなたに土日勤務を命令することができません。そのような場合、あなたは土日勤務を拒否しても何ら問題ありません」(多田弁護士)

 

就業規則の内容いかんでは違法となる可能性が高く、拒否しても問題ない場合もあるようです。まずは規則を確認する必要がありそうですね。

様々なケースが考えられますので、Sさんのように無茶苦茶にも思える業務命令に悩んでいる方は弁護士への相談をおすすめします。

 

*取材協力弁護士:多田幸生(諏訪坂法律事務所。大手証券会社勤務を経て、弁護士登録。企業法務、不動産、債権回収、人事労務にノウハウの蓄積があり、これらを駆使して問題の解決に当たる。予定がない限り、当日相談にも対応。)

*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)

【画像】イメージです

*IYO / PIXTA(ピクスタ)

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