救急車に道を譲ったところ、後続車両が救急車の前に割り込むように追い越しをしていき、あわや救急車と接触するかのような場面を映したドライブレコーダーの映像がTwitterに投稿されていたようです。
後続車両の運転手がサイレンを鳴らしている救急車の存在に気づいていたのかいないのかはわかりませんが、客観的に危険な運転であることに間違いありません。
そこで、今回は、緊急走行中の救急車に道を譲らなかったり、走行を妨害したりしたときは、どのような処分が待っているのかについて解説します。
■救急車に道を譲らないと行政処分等の対象になる
自動車教習所でも習うことですし、常識的な結論ですが、救急車やパトカー等の緊急走行車両に道を譲らないときは道交法40条、120条1項2号により、5万円以下の罰金が科されます。また、行政処分としても違反点数1点、反則金6,000円(普通車の場合)となります。
なお、2車線以上の道路において、右側車線を走行中に後ろから緊急車両が来た場合でも、道路の左側に寄るのが正解です(道交法40条1項、2項)。
■道を譲らないことによって搬送中の患者が亡くなったらどうなる?
道を譲らなかった運転手がいたことによって、救急車の到着時間が遅れ、搬送中の患者が亡くなったり後遺障害が残ったりした場合、運転手に民事上ないし刑事上の責任を問えるのか?という疑問が生じるかもしれません。
この問題は民法や刑法の教科書事例のようなものですが、因果関係や故意・過失があれば(そして実務上はこれらが立証できたとしたら)、運転手は民事上ないし刑事上の責任を負うことになります。
ただし、実際には、たとえば到着時間が2分遅れたとして、2分早く病院に到着さえしていれば適切な治療を受けられて患者が生存していた(あるいは後遺障害が残らなかった)はずだという因果関係の立証は非常に困難です。
緊急車両妨害のケースに限らず、自動車にドライブレコーダーを付けておくことにより加害者となった場合も被害者となった場合も身を助けたり裁判での立証に役立ったりすることがありますので、まだドライブレコーダーを付けていない方は設置を検討してみるとよいでしょう。
*著者:弁護士 木川雅博 (企業法務(会社運営上生じる諸問題)、売買代金・貸金請求、損害賠償・慰謝料請求、不動産を巡る法律問題、子どもの事故、離婚・男女間のトラブル、相続問題,破産・民事再生・債務整理、労働問題など、法人・個人を問わず様々な案件を扱っています。趣味は料理とランニング。東京弁護士会。星野法律事務所)
【参考】
*grape:後ろから救急車のサイレンが! しかし後続車が危険な運転
【画像】イメージです
*kou / PIXTA(ピクスタ)
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