厳しい寒さが続く昨今、体調を崩している人も多いことでしょう。発熱など症状が重篤化してしまったら、薬を飲んで眠るのが一番ではないでしょうか。
とはいえ、原因不明の症状であるときなどは、適した薬が家にない場合があります。病院に行って薬をもらうこともままならない場合は、苦しむのみになってしまいます。
そんなときに、家族や友人から以前自分が医師から処方されたものを「症状が同じだから」ともらったことがある方もいるのではないでしょうか? 病気の人間にとっては助かりますが、実はこの行為が違法になる可能性があるようです。本当でしょうか?
医療問題に詳しい三宅坂総合法律事務所の伊東亜矢子弁護士に真相を伺いました。
Q.処方された薬を友人にあげる行為は違法になりますか?
A.違法になることもあります。
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(旧薬事法)上、以下の規定があります。
“第二十四条 薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、業として、医薬品を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列(配置することを含む。以下同じ。)してはならない。”
しかし、家族や知人に1回処方薬を渡しただけで「業として」の「授与」に当たるというようなことはありません。もっとも、薬によっては麻薬及び向精神薬取締法に違反する可能性はありますし、医師法17条の「医師でないものは医業を行ってはならない」との規定に反すると解される可能性もあります。
また、渡した薬を飲んだ人にひどい副作用が生じてしまったり、本当はすぐに医者の診察を受けた方がよい状況なのに薬をもらったからいいやと思って受診の機会を逸し、症状を重篤化させてしまうなどのことも考えられますので(これらの場合、渡した側に民事上の不法行為責任が生じる可能性はあります)、安易な譲渡には危険が伴うと言わざるを得ません」(伊東弁護士)
処方薬を他人に譲渡する行為は「危険が伴う」ということを認識しなければなりませんね。
*取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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