冬の登山中やスノーボードをしている最中に、ルートから外れた奥地へ進んで迷い込むなど、雪山での無茶な行動は絶対に控えたいものです。特に年末年始の休暇中には、毎年各地で遭難に関する報道が相次いでいます。
もし遭難してしまったら救助などに多くの人が出向き、何日間も活動に当たり、ヘリコプターや重機などが出動することもあります。そして気になるのはその「費用」です。
多くの人を巻き込んでしまう「遭難」を起こしてしまった場合、どれくらいの費用がかかり、請求されるのでしょうか?
■公的機関の捜索の場合、費用は請求されないことが多い
警察や消防、自衛隊、遭難場所の自治体職員といった公的機関の公務員による捜索活動の場合、基本的には、費用は請求されないことが多いようです。
この点、法律に明確な規定は見当たらないようですが、行政機関による通常の公務執行に伴う費用と考えられることから、請求しない扱いとなっていると推測されます。
わかりやすくいうと、警察が犯人を逮捕することや、消防が家事を消し止め、患者を救急車で搬送すること、自衛隊が災害救助すること、自治体職員が災害対応をすることと同じように、遭難者の捜索は、公務員の本来の業務であり、そのために税金から予算を回しているので、基本的には行政サービスを実際に受けた人に別途費用を請求しない、というイメージです。
ただし、住民票を請求する際に手数料を取られたり、パスポートの発行などで印紙代を収めたりすることがあるように、国が実費を請求することもできると考えられます。
■民間による捜索も加わった場合は費用がかかる
公的機関だけでなく、民間による捜索も加わった場合は、ヘリコプターの運用費用、燃料、人件費等が救助を行った団体や会社から請求されることがあります。
もちろん、捜索段階で断ることもできますが、民間の場合、ヘリコプターを1回飛ばすだけで100万円程度かかることもあり、費用が高額になりがちです。
とすれば、できるだけ公的機関を利用したいところですが、大規模な遭難事件だと、公的機関による救助だけでは人員や機器が足りないこともあり、家族の命のために民間にも救助を依頼することも多いようです。
なお、遭難者本人が助からなかった場合でも、遺族が相続放棄しなければ、費用は遺族に相続承継されてしまいます。
■保険対象となることもある
救難捜索費用は、山岳保険やレジャー保険に加入していれば、保険金が支給されます。
限度額が設けられていますので、全額支給されないこともありますが、自己負担よりは助かるので、加入を検討してもよいでしょう。
なお、救急車をタクシー代わりに安易に利用する人に費用を請求すべきとする議論が近年ありますが、大規模な遭難救助活動についても自己責任である結果に対して多額の税金を投入することに批判の声もあるようです。
天候や計画に十分気をつけ、大自然を楽しみましょう。
*この記事は2015年1月に掲載されたものを再編集しています。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)
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