先月29日にキュレーションメディア「WELQ」が全記事を非公開にしたことを口火に、「NAVERまとめ」でも無断転載が問題になったりと、インターネット上の記事等に関する著作権に関し、注目が集まっています。
いわゆる“コピペ”をしたら著作権侵害になるだろう、といった想像はつくかと思いますが、実際、著作権というものに対して、なんとなく抵抗を感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、著作権についての基本的な考え方について解説していきたいと思います。また、日常生活でやってしまいがちな著作権侵害についても触れたいと思いますので、ご覧ください。
■著作権の法的な定義とは?
「著作権」という言葉は日常生活でもよく耳にすると思いますが、法律上の定義を確認しておきましょう。「著作権法」という法律に、以下の規定があります。
著作権法17条 著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。
「第二十一条から第二十八条までに規定する権利」というのは、具体的には、複製権、上演権及び演奏権、上映権、公衆送信権、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権・翻案権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利です。色々とありますね。
ただし、何にでも著作権が認められるという訳ではなく、著作権が認められるのは「著作物」にあたるものだけです。
著作物についても著作権法に規定があり、法2条1項1号に「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定されています。
ちょっと、抽象的で分かりにくいかもしれません。法律というのは社会を規律するためのルールであり、様々なケースへの適用が前提となりますから、ある程度抽象的にならざるを得ないところはあるのですが、著作権にはちゃんと「例示」があって、10条で以下のとおり規定されています。
第10条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物
2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。
3 第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。
一 プログラム言語 プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。
二 規約 特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。
三 解法 プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。
■著作物であるかの判断となるポイントは?
著作物であるかどうかを判断するポイントになるのは、「思想や感情が創作的に表現されているかどうか」ですが、中にはそれが微妙なものもあるでしょう。しかし、インターネット上に投稿されている「記事」や「画像」(写真、イラスト、CG等)については、基本的には「著作物」にあたると考えたほうが無難でしょう。
そうした他人の著作物を無断で使う(自分のブログに載せる等)ことは、著作権を侵害する行為になりますから、差止め(著作権法112条)や損害賠償請求がなされる可能性があります(著作権法には罰則もあり、著作権侵害については10年以下の懲役、500万円以下の罰金(またはこれらを併科)というかなり重いものが規定されています(法119条1項))。
ただし、著作権法には「公表された著作物は、引用して利用することができる。」(法32条1項)という規定がありまして、著作権を持っている人の承諾を得ていなくても、著作権法が定める「引用」にあたるときは、著作権侵害にはありません。
■適切な「引用」はどういった要件を満たす必要がある?
では、どういう利用方法ならば「引用」といえるのかですが、著作権法32条1項では、上にあげた条文に続けて「この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」と規定されています。
具体的には、たとえば論文を執筆している場合に、その論文の中で他人の論文に言及し、それについて考察するために文章を掲載する、といったケースが考えられるでしょうか。
そして、適法な「引用」と認められるためには、以下の条件を満たす必要があるとされています。
(1)引用する必然性があること
(2)他人の著作物を引用した部分が明確に分かるよう、括弧をつける等して自分の著作物と区別されていること
(3)自分の著作物が「主」、他人の著作物を引用した部分が「従」という関係にあること
(4)引用した部分の出典(著作者、著作物のタイトル、サイト名、URL等)が明示されていること(著作権法48条)
ちゃんと「引用」するためには、けっこう色々な点に気をつける必要がある、ということがお分かりいただけるでしょうか。
例えば、「インターネット上で見つけた記事を自分のブログに転載する」場合には、上に述べた「引用」の条件を満たすよう必要がありますから、記事を全文コピペして「こんな記事がありました!」など申し訳程度のコメントを付記した程度では、「引用」とは認められないと考えたほうがよいでしょう。