「ブラックバイト訴訟」当事者である元従業員が逮捕…この処分の影響を弁護士が解説

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

21歳の男性大学生がアルバイト先だった「しゃぶしゃぶ温野菜」北習志野店(現在は閉店)で、休みのないシフトや度重なる暴言・暴行を受けたと、同店を運営するDWE JAPANを訴えたのは今年9月のこと。この男性が相談にかけこんだ労働組合「ブラックバイトユニオン」の後押しもあり、マスコミで大々的に取り上げられました。

さらに大手広告代理店の女性新入社員が常識を超えた残業を苦に自殺した事件もあり、国内ではブラックな労働条件に注目が集まっていました。そんななか11月28日、ついに警察が上司だった元従業員を暴行の疑いで逮捕しました。

ブラックバイトの実情を訴えたことが元になって逮捕者が出たことで、今後も訴えれば逮捕者が出るようになるのでしょうか?

労働問題に詳しい弁護士法人プラム綜合法律事務所の梅澤康二弁護士にお訊きします。

*取材協力弁護士:梅澤康二(弁護士法人プラム綜合法律事務所。東京都出身。2008年に弁護士登録。労働事件、労使トラブル、組合対応、規定作成・整備などのほか各種セミナー、労務問題のリスク分析と検討など労務全般に対応。)

 

 

\あなたに顧問弁護士がいるような安心感を/

弁護士保険「Mikata」

■「暴行」で逮捕されたという点がポイント

今回、違法な労働条件ではなく、あくまでバイト時の暴力に関してという形で逮捕されていますが、学生がしっかり録音や暴行跡の写真など、証拠を集めていた部分も大きく寄与していると思われます。

産経新聞の報道(12月6日web版)では「バカ野郎が、殺すぞ、お前」「なんでそんなほうに置いているんだよ、バカ野郎。なんでこっち置いとかないんだよ」などの暴言と殴る蹴るをされていると思わしき鈍い音、痛さにうめく声なども録音されていたと伝えています。それがなければ検挙には至らなかったでしょうか?

「本件が訴訟を起こした時点でマスコミに注目されたことから、警察が動いたことは十分あり得ると思います。ただ、当初報道では恐喝や傷害について言及されていましたが、逮捕事実が”暴行”ということは、当該恐喝や傷害については証拠不十分と判断されたのかもしれません。

いずれにせよ、今後の捜査でより真実が明らかになる可能性がありますので、捜査の展開を待つべきでしょう。」(梅澤弁護士)

 

■暴行事件が過酷労働の訴訟にも影響を与える可能性あり

ブラックバイト中に起きた暴行で逮捕されたということは、刑事事件の中でもあくまでその暴行について裁かれることになり、過酷労働については裁かれるわけではありません。

「本件の暴行は刑事事件であり、民事事件である過酷労働の訴訟とは直接の関係はありません。民事事件は暴行事件の処理とは無関係に進むでしょうし、刑事事件は民事事件とは関係なく検察が起訴・不起訴の判断をするでしょう。

ただ、暴行自体は軽微な犯罪類型に該当しますので、起訴されてもそれほど重い罪になる可能性は低いと思います。また、暴行は客観的証拠が乏しい場合もあり、その場合検察が起訴しないかもしれません。

もっとも、警察が店舗側の人間を逮捕したことは、店舗側の対応が違法かつ悪質なものであったことをそれなりに印象付けると思います。したがって、今回の逮捕により、労働者側の訴訟での立場は相対的に有利になった可能性はあると思います。」(梅澤弁護士)

本件訴訟では、バイト中にいわれのない罵詈雑言を浴びせられたことや蹴ったり殴ったりといった暴力を加えられたことが争点として取り上げられているようです。そうすると、本件訴訟の裁判結果によっては、今後のアルバイトに対する過酷な仕打ちを抑制する先例となる可能性は十分あります。

万が一、この記事を読んでいるあなたが今まさに被害者であるならば、スマホやICレコーダーで音声だけでも記録し、痣などが残れば写真を取り、医師の診断書を取るなど、証拠がためをして、場合によっては警察に駆け込むといいかもしれません。

 

■ブラックバイト問題は警察も無視できない段階に

最後に、梅澤先生に今回の検挙について弁護士として素直な感想をお伺いしてみます。

「警察は通常、労働問題は民事不介入の立場を取って取扱いたがりませんが、本件は社会的に大きく騒がれたため、警察として無視するわけにも行かなかったのが本音でしょう。

ただ、恐喝や傷害等の重い罪での立件が困難であることから、とりあえず”暴行”という安全な線で立件した印象は否定し難いです。もっとも今後の捜査の進展により本件訴訟の実態が解明される可能性は十分ありますので、期待しています」(梅澤弁護士)

となると、すべての暴行案件で逮捕まで至るかは微妙です。とっとと辞めるのがいちばんですが、それもしづらい恐喝をしてくるのがブラック企業です。逮捕に至らないまでも、とにかく然るべきところには駆け込んで相談すること。結果はそこから生まれてきます。

 

 

*取材協力弁護士:梅澤康二(弁護士法人プラム綜合法律事務所。東京都出身。2008年に弁護士登録。労働事件、労使トラブル、組合対応、規定作成・整備などのほか各種セミナー、労務問題のリスク分析と検討など労務全般に対応。紛争等の対応では、訴訟・労働審判・民事調停などの法的手続きおよびクレーム、協議、交渉などの非法的手続きも手がける。M&A取引、各種契約書の作成・レビュー、企業法務全般の相談など幅広く活躍。)

*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。)

【画像】イメージです

*Graphs / PIXTA(ピクスタ)

【関連記事】

「労組」と「ユニオン」の違いって?「労働組合法」を知ってブラック企業から身を守ろう

深刻化するブラックバイト問題。非正規雇用者がパワハラにあったとき、誰に助けを求めるべき?

面接時に「ブラックバイト」か見抜く方法はあるのか?知っておきたい雇用契約の実態

日本初の「ブラックバイト訴訟」で問題視されているポイントを弁護士が解説

「ブラックバイト」に立ち向かうためにとるべき行動

弁護士保険「Mikata」

コメント

コメント