松本人志が「違法ギャンブル大会」を主催!?そもそもどんな賭博が違法になるのか

■本番組が「賭博罪に当たらない」といえるためには

単純賭博罪は国外犯を処罰しない(刑法1条1項、2条、3条)ので、撮影がすべて海外で行われているのであれば、上記のルールであったとしても参加者が罰せられることはありません。

もっとも、参加者やスタッフが全員海外に行って撮影することは現実的ではありませんので、このような方法で適法性を確保したとは考えづらいです。

したがって、現実的なスキームとしては、下記の3つのようなものが考えられます。

①参加費100万円は本番組の出演権及び出演報酬権の対価である
②本番組の出演報酬は100万円程度である
③賞金1000万円の原資は参加費以外である

こうした方法により、本番組は適法性を確保しているのではないかと推測されます。

なお、可能性としては、参加費100万円そのものを参加者が用意したわけではなく、そのように演出しているだけということも考えられますが、番組中に「(用意した100万円は)本当にみなさんがかき集めたものですね。」旨の問いに対して参加者から「はい。」とえるシーンがありますので、その可能性はないでしょう(そうだとすれば行き過ぎた過剰演出という別の問題が出てきます)。

 

■合法なギャンブルと違法な賭博の違いとは

日本には公営(合法)ギャンブル(賭博)として、競馬・競艇・競輪・オートレース、宝くじ・スポーツ振興くじ(toto)があることはご存知かと思います。これは特別法がありますので、もちろん合法です。

また、多くの議論はありますが、パチンコ・パチスロ店も違法ではありません。

それ以外の「偶然の勝敗によって、財物や財産上の利益の得喪を争う」賭け事で、その場で費消する飲食物などを賭けるにとどまらないものはすべて賭博罪に当たってしまいます(刑法185条)。

合法賭博と違法賭博の両者の線引きはこのようになっていますので、雀荘での賭け麻雀(場代程度を除く)をはじめ、トランプ、じゃんけん等、内容を問わず、種々のゲームが賭博罪に当たり得ます。

 

いわゆるカジノ法案(IR推進法案)が衆院本会議で可決し、日本でもカジノが解禁されることに対して様々な議論がなされています。今回のテーマとの関係上、詳細は省略しますが、刑法制定時と現在とで、賭博罪の保護法益である健全な経済的風俗が変化しているか否かや、刑法のあり方についても再考すべき時期が来ているといえるかもしれませんね。

 

 

*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)

【参考】

BLOGOS:【悲報】松本人志さん、違法ギャンブル大会を主催か?

【画像】

Tsuguliev / Shutterstock

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木川 雅博 きかわまさひろ

星野・長塚・木川法律事務所

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