恋人が実は既婚者だった…知らずに「不倫交際」していた場合も責任は発生するの?

未婚だと思っていた恋人が実は既婚者だったという経験をされた方が、この記事を読まれているみなさんの中にもいらっしゃるかもしれません。特に12月は、既婚者側からすると「今夜は忘年会で遅くなる」といったウソが成立しやすく、浮気相手との時間が作りやすい時期となり、探偵事務所や興信所でも「浮気調査」が増える傾向にあるそうです。

今回は、既婚者と知らずに既婚者と交際していた場合、騙されて交際していた側としては、騙していた既婚者に対して、何か請求することができるのか、逆に、既婚者の配偶者に対して何らかの責任を負うことがあるのかについて解説していきたいと思います。

はたして、知らない間に不倫相手になっていても責任を負うなんてことがあるのでしょうか?

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

 

■ウソをついた既婚者に対する損害賠償請求は可能

まず、未婚だと偽られて既婚者と交際していた人には、既婚者に対して、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)が認められる可能性があります。

既婚者と交際していた人としては、未婚者だからその人と交際していたわけで、交際前に既婚者であると知っていたならば交際はしなかったはずだし、肉体関係を持つこともなかったということなので、貞操権(性的自由)の侵害を理由に、上記請求が認められることになります。

もっとも、注意をすれば、交際相手が既婚者であると気付くことができたような場合(左手の薬指に指輪をして出来たような日焼けの跡がくっきりとある、泊まりのデートはしない、携帯電話の待受画面に子どもの写真を設定しているなど)には、既婚者と交際していた人にも「過失」が認められますので、過失の程度に応じて請求額が減額される、あるいは過失が大きい場合には請求が全く認められない可能性があります。

 

■既婚者の配偶者からの損害賠償請求が成立する要件とは?

既婚者との性交渉(不貞行為)は、既婚者の配偶者に対する不法行為に該当しますので、既婚者の配偶者に対して損害賠償責任を負う可能性があります。

しかしながら、既婚者の配偶者に対する不法行為が成立するためには、既婚者の配偶者の夫婦としての権利を侵害しているとの認識を持ちながら、既婚者と性交渉をすることが必要です。

そのため、既婚者と性交渉したとしても、その人が既婚者だと知らなかった場合には、既婚者の配偶者の権利を侵害しているとの認識はありませんので、不法行為は成立しません。

もっとも、上記のとおり、交際相手が既婚者だと知らなかったとしても、注意をすれば、既婚者であると気付くことができたような場合には、既婚者と交際していた人にも過失が認められますので、既婚者の配偶者に対する不法行為が成立し、損害賠償責任を免れることはできないと考えます。

 

*この記事は2014年11月に掲載されたものを再編集しています。

*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)

【画像】イメージです

*KAORU / PIXTA(ピクスタ)

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理崎 智英 りざきともひで

高島総合法律事務所

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