【千葉女性監禁】メールを理由に被告の反省が疑問視…SNSの証拠能力はどこまである?

■普通は「証明力」が裁判の争点に

証拠能力は、刑事裁判では、メールや供述調書といった書面や、伝聞の供述は証拠能力が原則としてないとされています。これらが取り調べられるのは、当事者の同意がある場合や例外要件を充足するときのみです。

また、民事でも刑事でも、違法に収集された証拠は、中身の評価(証明力・信用性)に立ち入るまでもなく、証拠能力がないとされることがあります。

もっとも、刑事の大多数の自白事件や民事裁判で証拠能力の有無を争うことはほとんどなく、当該証拠の証明力のみが問題となります。

 

■「証明力」の判断は全ての事情を総合考慮

証拠がもつ証明力は、裁判所の法的な経験則を基に、他の証拠との整合性や変遷なども含めて、全ての事情を総合考慮して決定されます。

今回のように、被告人が公判で述べた反省と謝罪と矛盾する言動をメールなどに残していた場合、(証拠能力が肯定されたと仮定して)メールの証明力が問題となるというより、公判で述べた反省と謝罪の供述の証明力・信用性が問題となります。

そして、当然、矛盾するメールの存在は、公判での反省謝罪の供述の信用性を揺るがせ、証明力を減退させるものとして、裁判でも評価されることになります。

このようなメールを裁判では、被告人の公判での反省供述を弾劾するための証拠と呼んだりします。

刑事裁判では伝聞法則というものがありますので、メールが無条件で証拠能力を有するものとはなりませんが、被告人側(弁護人)の同意があるような場合には、証拠能力が肯定され、実体に応じて、他の証拠(被告人の供述)の弾劾に使用されたり、証拠としての証明力が評価されることになります。

最後に、メールは書面と同じく客観証拠の部類に区別できますので、一般的には口頭での供述・証言よりは、証明力・信用性が高いといえるでしょう。

 

*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)

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*Graphs / PIXTA(ピクスタ)

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星野宏明
星野 宏明 ほしのひろあき

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