■お店のルールを守らないお客さんを追い出すことは可能か?
お店とお客さんとの間には「ソースの二度づけ禁止」という合意ができており、かつ二度づけしたお客さんには退店いただきます、ということまで明示された上でお客さんが入店した場合には、お客さんは合意をしたものとみなされます。
そして、一方がその契約を守らない場合には、他方は、契約を守らないことを理由に、催告をした上で契約を解除することができます(民法541条)。
つまり、「ルールを守らないのであれば出ていってもらいます」という忠告をお店側がしたにもかかわらず、お客さんがルールを守らないのであれば、契約を解除し、それまでの飲食代金は損害賠償(民法415条)として請求することになります。
■「違反したら退店」という記載がない場合は?
また、仮に退店いただく、ということまでの明示がない場合には、お店側がお客さんとの間の飲食物提供契約を解除できるか、という観点から検討することになります。
たとえば、「ソースの二度づけ禁止」を守らないことでお店の営業に大きな支障を生じる場合、具体的には、昔からソースを継ぎ足しで使っていることを売りにしているお店において、カウンター席などで他のお客さんとソースを共用するような場合には、二度づけをすることが、お店の貴重な財産であるソースを使えなくしてしまい、かつ「ルールを守らずに二度づけしてしまう客がいて、お店もそれを黙認しているらしい」という風評が、他のお客さんの来店を遠ざけてしまうことになりかねません。
その場合、「ソースの二度づけ禁止」迷惑などの理由から、お店側は即刻契約を解除して、退店いただくことが可能になる可能性は高いと思います。
一方、ソースが個別のお客さんに提供されているような場合で、ソースを継ぎ足し使用していないお店の場合には、即刻飲食物供給契約を解除できるまでの重大な契約違反があるとは言いにくく、退店いただくことまでの必要性は認められにくいと思います。
なお、お客さんがお店から退店を指示されたにもかかわらず退店しない場合には、不退去罪(刑法130条)、態様によっては威力業務妨害罪(刑法234条)が成立する可能性があります。
単純そうですが、法的な解釈を元にすると少々複雑ですね。
とはいえ、美味しい串カツを食べているのに、お店のルールを守らずに“カツ!”を入れられてしまっては、せっかくの楽しい時間も台無しです。お店とお客さんのそれぞれがルールを守ることが大事ですね。
*著者 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)
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*Key West / PIXTA(ピクスタ)
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