今期放送中のドラマの中でも、もっとも話題となっているラブコメディ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)がいよいよ最終回(12月20日)を間近に控えています。
このドラマで「恋ダンス」とともに注目されているのは、その設定です。主人公のふたりが「夫(津崎平匡)=雇用主、妻(森山みくり)=従業員」の雇用関係で「契約結婚」するというものですが、法的には本当に成立する内容なのでしょうか?
■契約当初のみくりさんたちの「契約結婚」は、事実婚にあたるのか?
事実婚というのは、「社会観念上夫婦となる意思をもって夫婦共同生活を送っているが、婚姻の届出を欠くために、法律婚とは認められない男女の関係」のことをいいます。要は、世間的に見て夫婦になるつもりで一緒に暮らしているけど、婚姻届を出していない関係のことを事実婚といいます。
契約当初のみくりさんたちの「契約結婚」についてこれをみると、みくりさんたちは家事代行サービスのために同居しているだけであって男女の関係も全くないわけですから、世間的にみて夫婦となるつもりで一緒に暮らしているとはいえません。
よって、契約当初のみくりさんたちの「契約結婚」は事実婚といえません。
それでは、みくりさんたちの「契約結婚」はどのような契約なのでしょうか?
みくりさんたちの契約は、「契約結婚」といいつつ、家事代行サービス+みくりさんが世間的に妻として振る舞うことを目的とした民法に載っていない契約といえそうです。
■「ハグ」を強制できるのか?
みくりさんたちの契約は、契約当初、かなりドライな契約でした。しかし、みくりさんも平匡さんは一緒に暮らしていくうちに週一回の「ハグの日」を決めたりしているように、その契約内容はウエットなものに変化していきます。
それではドラマとは違って、仮にみくりさんや平匡さんの関係が悪化し、みくりさんが「ハグの日」にハグを拒絶した場合、平匡さんは、みくりさんとの「ハグ」の履行を確保するために、裁判所の力を借りて、「ハグ」の強制をできるのでしょうか? 結論からいうと、強制できません。
また、お金の支払いを命じることで心理的に圧力を加えてやらせるやり方(間接強制)で「ハグ」を強制するのはどうでしょうか? これも人格を不当に圧迫し、人格尊重の理念に反する場合、間接強制は認められません。
そして、「ハグ」を強制することは人格尊重の理念に反しません。よって、間接強制で「ハグ」を強制することもできません。
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