■個人情報が悪用された場合、責任は重くなる?
現在のところ被害は確認されていないようなのですが、もし今回の紛失が原因で個人情報が悪用されてしまった場合、佐川急便が負うべき責任はより重くなるのでしょうか?
「個人情報の紛失→その個人情報が悪用される→実際に損害が発生する、という因果関係が証明されることが前提となりますが、その紛失した情報が“悪用”されたことが原因で直接損害が発生した場合は、その額を請求できると思います。よって佐川急便が負うべき責任はより重くなると言えます」(森川弁護士)
現状、まだ被害は確認されていないため仮定の話にはなりますが、もしも紛失した個人情報が悪用されてしまう結果となった場合、佐川急便の責任は重大化する事になりそうですね。
■誰に対して損害賠償が可能になるのか?
最後に、仮に今回のような個人情報流出の被害者になってしまった場合、誰に損害賠償を請求できるのでしょうか?
「誰に請求できるかですが、まずは、その個人情報を悪用した人に対して損害賠償を行う事になります。ただ、それが誰なのか判明しないときに、今回の事件であれば流出元である佐川急便に対して損害賠償請求をできるかどうかということですが、上記で解説したように情報流出によって損害が発生したという因果関係を証明することができれば可能になると思います。」(森川弁護士)
まず損害賠償請求をすべきなのは悪用した人物が先になる、というのは意外に感じる方も多いのではないでしょうか。ただ、個人情報流出被害の場合、悪用者を特定するのは難しいため、やはり森川弁護士の解説通り因果関係を証明した上で流出元に損害賠償請求を行うことが確実な方法だと言えるのではないでしょうか。
*取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)
*取材・文:ライター 松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。
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編集部
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