12月に入り、忘年会シーズンがやってまいりました。この時期決まって起こる事の一つとして終電を逃した場合などによるタクシーでの帰宅。しかしながら、仕事納めやストレス発散のため、ついつい飲み過ぎてしまうことも多々あるかと思います。
そこで、今回はそんな忘年会などで飲み過ぎてしまい「タクシー内で嘔吐してしまった場合」、法的な責任は発生するのかを説明してまいります。
■タクシー内での嘔吐は「善管注意義務違反」!
タクシーに乗るということは、両名の間で旅客運送契約が締結されていることになり、運転手は、お客さんを安全に目的地まで運送し、お客さんは運賃を支払う義務を負うことになります。このことはご存じの方も多いでしょう。
実は、このこと以外にも“互いに損害を生じさせないための善良なる管理者としての義務”(善管注意義務)が発生するのです。
自身の嘔吐の可能性を考慮に入れず、タクシーの座席を嘔吐により汚損してしまうということは、この「善管注意義務」に違反したということになります。
善管注意義務違反があった場合、乗客はそれにより生じた損害を賠償する必要がありますが、その賠償の範囲は、社会通念上生じる内容に限られます。
■タクシー側の「逸失利益」を賠償しなければならない
そこで、その賠償にあたるのが「逸失利益」によるものです。
「逸失利益」とは、「本来であれば得られるはずだった利益」が得られない場合にそれを損害として賠償請求の対象とする概念をいいます。
ですから、嘔吐したことによって、タクシー会社が本来得られたであろう利益を損なったか否か、という観点から考えることになります。
タクシーの座席を嘔吐によって汚損してしまった場合、そのタクシーが座席交換ないしクリーニングを終えるまで、他の乗客を乗せることはできず、タクシーとしての営業ができなくなってしまうことは、社会通念上相当のことと言えます。
とすると、理屈としては、このタクシーが稼働できなかった間に得られるべき利益を、逸失利益として損害賠償請求することはできると言いやすいのではないでしょうか。
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