DeNAが運営する医療・健康情報WEBメディア『WELQ(ウェルク)』が11月29日の夜に全ての記事を非公開としました。
背景には、不確かな情報を元にした医療・健康系の記事を大量に公開していたことに対する批判が集まったことがあります。問題は、都の福祉保健局がDeNA担当者を呼び出す事態にまで発展しています。
本件ではどのような点が具体的に問題とされたのか考えてみましょう。
■認められた効果・効能等以外を表示してはいけない
WELQでは、医学的根拠が必ずしもないにもかかわらず、効果や効能を謳う内容が掲載されていました。
薬機法68条は、1項で「何人も」虚偽又は誇大な記事を広告・記述・流布してはならないとし、2項で「医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事」の広告等も禁止しています。
医薬品の販売をしているわけではないから問題ないのでは? と考える方もいるかもしれませんが、禁止されている主体は「誰でも」であり、また禁じられるのは「広告」に限りません。
したがって、ウェブ記事であってもこれに当たることになるのです。
なお、記事には「ようです」といった形で結論を断定していないものも多かったようなのですが、記事全体としてみれば効果・効能等を表示しているとみなすことができるのであれば、これに抵触する可能性があります。
■他の記事からの盗用はいけない
また、記事はインターネット上にある記事をほとんど丸々コピーして、語尾だけ変えるといったことをしているようですが、この点は著作権法に抵触しています。
インターネット上に公開されているからといって、それを勝手に使って良いかというと、当然そのようなことはありません。私的使用は許されますが、インターネット上に公開することは公衆送信権という権利を侵害するため、許されません。
そのため、侵害にならないためには、適切な「引用」といえることが必要です。裁判実務上、引用された部分が明確であること(明瞭区別性)、引用する側が「主」で,引用される側が「従」といえる関係にあること(主従関係性)が重視されています。
語尾だけ変えた記事は、このいずれも満たしていないため、適切な「引用」とはいえませんので、この点も問題といえます。
なお、しばしば「無断利用」といわれたりしますが、適切な「引用」は事前・事後に許可を求めることは不要なので、「無断」かどうかという点は問題になりません。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)
【画像】イメージです
*studiostoks / PIXTA(ピクスタ)
【関連記事】
*これで安心!身に覚えのない「架空請求メール」が届いた時の4つの対処法
*損保ジャパンが「ネット炎上保険」を国内初スタート!本当に役立つのか弁護士が解説
*「配偶者控除」を巡る法改正…もし年収上限が150万円に引き上げられたら困るのは誰?