11月15日、労働基準法の一部を改正する法律案を民進、共産、自由、社民の野党4党が共同で衆院に提出しました。こ今年の4月にも一度、同様の改正案が提出されていましたが、電通の女性新入社員の過労自殺の事件を受け、長時間労働に対する罰則を強化した上で、再提出したという流れになります。
この提出された改正案について、弁護士はどのような評価をするのでしょうか。労働問題に詳しい桜丘法律事務所の大窪和久弁護士に伺ってみました。
*取材協力弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間、弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。)
■「長時間労働」に焦点を絞った場合、極めて必要性が高い内容
4月の改正案では長時間労働を規制するため「労働時間の延長の上限規制」「インターバル規制の導入」「違反事例の公表」「罰則の強化」が盛り込まれていました。一方、今回の修正案では、違法な時間外労働をさせた場合には、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」から「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」と罰則が引き上げられました。
この改正法案について、注目すべき点や評価できるポイントはどこになるでしょうか。
「まず、労働時間の延長の上限規制を設けることは必要性が極めて高いと思います。
現行法では36協定の特別条項を定めることにより、事実上無制限の時間外労働が認められてしまいます。長時間労働を防止するためには、この青天井の時間外労働が認められてしまう現状を変える必要があります。そのためにも、労働時間の延長の上限規制を設けることは不可欠だと思います。
インターバル規制も必要性の高い内容です。インターバル規制とは、始業後24時間を経過するまでに一定時間以上の休息時間を与えることを義務化するというものです。これまでの過労死事件を見ると、単純に長時間労働したというだけではなく、休憩をせずに連続で長時間労働したことも過労死に繋がる大きな原因となっています。一定時間の休息を義務化すること、これも労働時間の上限規制と並び、必要な規制であると思います。
また、この改正案では労基法違反の事例について名称を含めて公表することが可能となっています。違反事例が公にされることは会社にとって大きなマイナスになりますので、これも長時間労働の防止につながるでしょう。」(大窪弁護士)
確かに、上限なく残業できることが認められている現状は一刻も早く変える必要があると思います。残業時間の上限の設定とインターバル規制によって、強制的に「長時間労働」ができないようにする。ここまで徹底して規制しなければ現状の「長時間労働」の問題は解決が難しいのかもしれません。
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