結婚前、夫の年収は1,000万と聞いていたのに、実際に結婚してみたら500万だったことが判明した……。
このような話は結構あるようです。
そして、配偶者の年収を気にする人はかなり多いのではないでしょうか?このような嘘をつかれていたとなると、思い描いていた結婚生活ができなくなるなどの問題が生じるかもしれません。
今回は、「夫が結婚前に年収1,000万と言ってたが、実際には年収500万だった」場合、妻からの離婚請求は認められるかどうかについて解説していきます。
■離婚ができる理由になるか
「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すれば、離婚が認められます(民法770条1項5号)。
この点、配偶者の年収の多寡は、一般的に結婚生活における重要な要素と言えます。
そのため、夫が年収を偽って結婚した場合、婚姻を継続しがたい重大な事由に該当する場合があります。
まず、妻が、夫の年収が1,000万円であることを決め手に結婚した場合、夫の年収が1,000万円であることは結婚成立の重要な動機となっています。
そのため、結婚前に妻がかかる動機を夫に伝えていたとすれば、実際には夫の年収が500万円しかなかったような場合には、婚姻を継続し難い重大な事由ありとして離婚が認められる可能性があります。
■結婚相手の年収を気にしていなかった場合
一方で、夫の年収が1,000万円であることが複数ある結婚の動機の一つに過ぎないような場合(重要な動機とまでは言えない場合)、年収が500万円であってもなお経済的に平均水準以上の結婚生活を送ることができている場合には、婚姻を継続し難い重大な事由ありとはいえないので、離婚は認められないでしょう。
以上のとおり、夫が年収を偽ったことを理由に離婚できるかどうかは、妻が夫の年収を結婚の重要な要素として考えていたかどうかによるということになります。
*この記事は2015年5月に掲載されたものを再編集しています。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)
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*MaCC / PIXTA(ピクスタ)
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