ジミー・ペイジ演奏なし問題…イベント主催者はチケット代を返金する義務があったの?

11月11日に東京・両国国技館で行われた音楽イベント『クラシック・ロック・アワード2016』。このイベントはロンドンでスタートしたロックミュージシャンの授賞式で、世界のビッグアーティストが集い、パフォーマンスを繰り広げることが魅力です。

このビッグイベントが、東京ではじめて開催されることとなり、目玉は世界三大ギタリストと呼ばれるまでになった幼馴染の二人、ジミー・ペイジとジェフ・ベックの「夢の饗演」でした。ところが、ジミー・ペイジはジェフ・ベックを紹介してトロフィーを渡しただけで、演奏をしませんでした。

これに対して主催者サイドは謝罪はしたものの、チケット代の返金はしないと発表。ネットを中心に大きな波紋を広げていました。そして11月20日、最終的に主催者はイベントに満足しなかったお客に対して、チケット代の全額を返金する旨を公式サイトで発表しました。

このような目当てのアーティストが演奏しなかったケースでは、主催者にはどのような責任があるのでしょうか?

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

 

■請求できるのは入場料の一部だけ

「今回のイベントは、事前に、『ジェフ・ベックとジミー・ペイジは、日本初共演を果たすことになり…』『ロックレジェンドたちによる夢の饗宴』云々のPRがなされていました。これを前提とすれば、主催者と観客との契約内容では『ジミー・ペイジが演奏する』ということになっていたといえます」と話すのは、アクシアム法律事務所の高木啓成弁護士

 *取材協力弁護士:高木啓成(アクシアム法律事務所。エンターテイメント法務、離婚や不貞行為などの男女関係の法律問題、交通事故(被害者側)、労働問題(会社側、従業員側どちらも対応)を取り扱う。)

 

観客がジミー・ペイジの演奏を期待したことは当然だと考えてよさそうです。

主催者とジミー・ペイジとの出演契約の内容はどのようなものだったのでしょうか。もしかすると、出演契約では、ジミー・ペイジが演奏することが契約内容になっていなかったのかもしれません。

ただし、仮に、演奏が含まれない契約だったのに、主催者が「てっきり含まれていると思った」と勘違いしていたという場合には、主催者側に過失が認められます。法律的には、観客が主催者に対してイベントの一部の解除(一部を返金)を求めることは認められるでしょう。

それでは、出演契約においてジミー・ペイジが演奏することが契約内容になっていたにもかかわらず、ジミー・ペイジが演奏しなかったといった場合はどうなるのでしょうか。このケースでも、観客の主催者に対するイベントの一部解除は認められる可能性が高いでしょう。他方、主催者はジミー・ペイジに対して「出演契約」違反に基づく損害賠償請求ができます。

逆に、出演契約においてジミー・ペイジが演奏することが契約内容になっていなかったにもかかわらず、あたかもジミー・ペイジが演奏しなかったと虚偽の説明をしたようなケースを想定してみましょう。こうしたケースでも、同様に、観客の主催者に対するイベントの一部解除は認められる可能性が高く、加えて、ジミー・ペイジ側も主催者に対して名誉棄損等の法的措置を採ることが可能と考えられます。

 

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