■被害者の救済はどうすべきか?
認知症の高齢者が交通事故などの加害者になるケースで特に難しいのは、加害者側における認知症の高齢者を介護する親族の負担と責任のバランスを考慮しなければならない一方、他方で、何ら落ち度がない被害者側の救済をどうすべきかという点です。
認知症のために責任能力がない本人と、残された親族も介護に疲弊していた状況では、安易に介護をしていた親族の監督義務者としての責任を認めるのは酷なケースも多くあります。事実上、十分な賠償をするに足る資力が残されていないことも考えられます。
他方で、落ち度がない被害者側の救済確保も当然必要です。
そういう意味では、交通事故に限らず、重い認知症の高齢者が不法行為を発生させものの、本人の責任能力が否定された場合、単純に、加害者の監督義務者に賠償させれば済む問題ではなく、かつ、被害者の救済もできるだけ図る方法を模索しなければなりません。
■今後の課題は保険制度の普及か?
責任能力が否定されるような認知症の高齢者が加害者となっている場合、もちろん被害者側は損害賠償請求などの法的措置をとることはできます。ですが加害者本人の責任能力が否定され、監督義務者の賠償義務も認められない場合、あるいは賠償資力がない場合、被害者側が確実に救済を受ける特効薬のような強力な手段というものは存在せず、高齢化社会が進む今後の政策課題といえます。
保険制度を普及させる場合は、保険料の負担をどうするかという問題が残り、税金で被害者救済する場合は、他の犯罪被害者支援との線引きや税金で救済する範囲、財源といった問題が生じます。
従前に比べ、高齢者の免許更新にあたっての審査・講習は厳しくなっており、一定の予防効果はあると思われます。
しかし、不幸にも事故が起きてしまった場合の十分な被害者の救済は、いろいろな課題があるのが現状です。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中 国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)
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*Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ))
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